うお座
有り余る主観と偶然
凄みのある感情
今週のうお座は、「いつ逢へば河いつ逢へば天の川」(田中亜美)という句のごとし。あるいは、ありったけの思いを、たたみかけるかのように放っていくような星回り。
世にたくさんの「私とあなた」は存在すれど、それを本気で一年に一度しか逢えないとされる織姫と彦星の伝説になぞらえようとする人は稀でしょう。けれど、この作者はそれをやる。
自分たちの逢瀬がいつならばふつうの「河」なのか、そしていつなら「天の川」になるのかと、たたみかけるのです。
ことほどさように、今週のうお座のあなたもまた、自分の中から溢れてくるとめどない思いと一体化して、エネルギーの奔流となっていくようなところがありそうです。
ごく普通の人間が、織姫になっていく途上にある恍惚とパワー、繊細さと飛躍の入り混じった感情の凄みのようなものを、今週は自分の中に感じていくことができるはず。
偶然性の作法
主観的すぎる態度は、客観性の欠如という意味では世間で低く見られがちなものかもしれませんが、一部の隙間も綻びも間違いもなく構築された現実を生きていくには、やはりうお座の人たちというのは繊細すぎるのだと思います。
かつてハイデッガーに学んだ九鬼周造(くきしゅうぞう)がそうだったように、堅い論文調で自らの哲学を語った途端に閉じていくように感じたものが、「もののはずみ」や「たまたま」に向かい、「ふと」や「それから」の世界に入っていくことで、柔らかく開いてくる。
必然性だけを追う人生よりも、もっと自然な偶然性を大切にしようとすると、どうしてもそういうことが分からなくてはなりません。
『偶然性の問題』を書いた九鬼がもっとも大切にしていた偶然は、おそらく「面影に向かって振り返るような」偶然であり、そこには「なつかしさ」をもって生の流れに再び接していくような精妙な手触りがあります。
思わず遠いところへ運ばれてしまうような瞬間を大切に。そして、不意にあらわれるであろう「天の川」をどうか見つけてみてください。
今週のキーワード
なつかしい未来