うお座
豊かな遠回り
夜店と遡行
今週のうお座は、「遠き世を歩いてゐたる夜店の灯」(今井聖)という句のごとし。あるいは、懐かしさと新しさが今この瞬間を通して入り混じり、そこから言葉が生まれてくるかのような星回り。
縁日の道端には露店が立ち並び、夕涼みの人たちでにぎわう。肩車をされている子供の頭をなんとなく視界に入れつつ人の波にのまれるようにして道を進んでいく。夜風が吹いて夜店の灯が少し揺れて、なんだか酔ったように景色が滲む。
そんな情景が浮かんでくるかのような一句。
はるかな時間をさかのぼっていくかのような懐かしさが漂う、あの独特の感覚を覚えたときは、帰り道も、なんとなく遠回りしたくなるというもの。
それにしても一体いつの頃からか、私たちは「近道と遠回り」を「善と悪」ないし「正解と不正解」と同定するようになったのか。
少なくとも夜店と絡んだ後の遠回りには、悪や不正解といったものとは程遠い豊潤な現在がそこに待っている。
今週のあなたもまた、夜風に吹かれてつい散歩したくなった時のような気軽さで、懐かしい思いや忘れかけていた記憶を反芻していくことになりそうです。
夢の場所へ
今週のうお座に必要なものは、「二歩下がる勇気」とも言えるかもしれません。
1歩といわず2歩も後退するのはなかなか勇気がいることですが、それはさっさと前に歩いていくことよりも今のあなたにとってずっと価値があるはず。
というのも、うお座の人がこの世をなんとか生き抜いていくためには、他のどの星座の人よりも生々しい手で触れられるくらい「リアルな夢」が必要なんです。
それもこの場合、実現可能な夢かどうかよりも、その夢がどれだけ深いものであるかが大切で、あなたという人生の内部にありながら、いまだ溶け込みきれず輪の外で佇んでいる幼い頃の自分として、“それ(夢)”は存在しているのでなければなりません。
色や形もぼやけた、曖昧で空虚で、ふいに現れる空き地のような夢の場所へ、ほんのちょっとだけ戻って、そこでまどろむ。
自分は何のために生きているのか、とかそういう難しいことは考えなくていいんです。
ただ、その場所のおかげで今の自分が存在できているという「安心感」を取り戻していくこと。まずはそれだけを頭に置いて、後のことはすべて忘れてください。
今週のキーワード
There is a dream dreaming us.