うお座
眼差しの温もり
言葉が自然と句になっていく時
今週のうお座は、「うぐひすや何こそつかす藪の霜」(与謝蕪村)という句のごとし。あるいは、誰か何かへとなげかける眼差しと口から出る言葉とが相呼応していくような星回り。
ウグイスがやぶの中でコソコソカサカサと音をたてながら動き回っている。あまりいい環境ではないけれど、それでも小さな命が生きてある喜びを震わせているかのようだ。作者の小さき者への温かな眼差しにどこかホッとさせられる一句です。
今週のあなたのテーマもまた、まさに掲句のように上手いとか下手だとか以前に、自分の感じた温度感をできるだけそのままに特定の誰かや周囲に伝えていくことにあるのだと言えるでしょう。
俳句も長くやっていると、どうしても歳時記などを開いてそこから言葉を構築してみたり、〆切前になんとか捻りだしたり、といったことが増えてきてしまうものですが、掲句のような句にあたると、まず眼差しを養うこと。
そこから自然と句になっていくようにしていくのが創作なのかもしれない、という気になってきます。
眼差しと言葉のつながりを感じながら、今週はぜひ過ごしてみてください。
エゴの置きどころ
とはいえ、俳句のよしあしなんて、門外漢からすればさぞかしどうでもいいことでしょう。
ただ、人として好感を持てるか。あるいは技巧のうまさよりも発された音のつらなりが心地いいか。そして心がくすぐられるかどうか、ということは、ひとりの読み手として大事になってくるのでは、とも思います。
冒頭の句であれば、「うぐいすや」と呼びかけた上で、可愛らしいその仕草と厳しい自然環境とを対比して見せたところに作者の人柄が伺えます。つまり、自分というものを前面に出さず、それを奥に引っ込めつつも、句にしてそれを残しておく。
それはただこれ見よがしに力強く歌い上げるよりも、より確かに眼差しの温もりを感じさせます。
そんな作者のあり様にこそ、今週は書き手としての自分と重なるところが出てくるでしょう。
今週のキーワード
読み手でもあり書き手でもある