てんびん座
胸の高鳴りと好きな歌
童心に返っていく
今週のてんびん座は、「ラムネ抜けば志ん生の出の下座が鳴る」(今福心太)という句のごとし。あるいは、わあっと胸が高鳴る瞬間を虫取り網でつかまえていくような星回り。
「下座」とは、楽屋の高座脇にある席のことで、転じてお囃子さんのこと。夏場の寄席にラムネの組み合わせも最高だけれど、これから天下の志ん生の登場だって言うんだから、思わずワクワクしてしまう作者の気持ちがよく伝わってくるようです。
ラムネとサイダーは成分でいえばほとんど同じものだそうですが、ラムネはあの玉入りの瓶の形状や色がいい。どこがいいのかいまいち説明しにくいですが、とにかく子供が喜んで飛びついていきたくなる要素が絶妙に詰まっている。
昔は冷房なんて気のきいたものが仕掛けられた寄席なんてありませんでしたが、それがかえって客なりの楽しみ方を引き出していたのでしょう。
今週のあなたもまた、楽しみを楽しみとして純粋に追いかけていくことの爽快さを、頭ではなく身体で思い出していくことができるかもしれません。
航行と漂流のはざま
井上陽水の『積み荷のない船』という曲をご存知でしょうか。この曲は「積み荷もなく行くあの船は、海に沈む途中」という歌いだしで始まり、「帰るまで好きな歌をきかせて、会えるまで胸と胸が重なるまで」というフレーズで終わります。
何事も、始まりがあれば必ずいつか終わりがやってくるもの。社会のリズムから宇宙的なリズムへと移っていくことで船の航行が始まるのだとすれば、宇宙的なリズムから肉体的な呼吸のリズムへと落ち着くことで漂流は終わります。
この曲で歌われる「好きな歌」とは、宇宙的な運行リズムが、自分が落ち着くべき肉体のリズムと組み合わさり、アレンジされていく上で自然に生まれてくる音楽なのではないか、そんな風に思います。
人生というものが、そんな音楽と共にあるのだとすれば、あなたはどんな音を選びますか。そんなことを考えつつ、今週を過ごしてみてください。
今週のキーワード
頭で考えるのではなく胸で感じていくこと