てんびん座
境界線とその見通し
橋を見つめる
今週のてんびん座は、「人絶えて長き橋長き夜を懸(かか)る」(大野林火)という句のごとし。あるいは、境界線のしじまと、その向こう側の夜明けとを感じていくような星回り。
橋と言えば、昔はたくさんの人が往来する雑踏の象徴であり、そこには必ず賑やかなイメージがついてまわっていた訳ですが、作者の自註にも次のようにあります。
「昼から夕方にかけて往来の繁かった橋が、いまはまったく行き交いのないのが興を引いた。橋にも夜長がはじまったのである。」
「夜長」は秋が深まるにつれ夜が長く感じられることを表す季語ですが、ここでは橋を舞台として、たちあがってくるその姿の昼と夜との対比の著しさが強調されています。
橋というのは、物理的にA地点とB地点とをつなぐ通路であると同時に、夜と昼、過去と未来、、目に見えないものと目に見えるものなど、根本的に異なるまったく別の世界を結んでしまう媒介物でもあるのです。
てんびん座の人は、いま特に人間関係において変化の波が来ている人が多いかもしれません。
そのなかで今週は、誰かが離れていくことで初めて自分の元へ戻ってくる力というものがあるのだということを、どうか頭の隅に置いてみてください。
いずれ別れはやってくるもの
「花に嵐のたとえもあるさ
さよならだけが人生さ」
これは井伏鱒二の詩ですが、今週のてんびん座にとってのよき指針でもあります。
つまり、「キープ」と呟きたくなる習慣と惰性に囚われそうになった時、さよならを言うことによってのみ、人は正気に戻れるような気がします。
あるいは逆に、「いずれ別れがくる」と思いながら見つめ直してみることで、何の計算もない素直な感情が引き出されていくことがあるでしょう。
縁というのは、時がくれば必ずほどけていくものです。それが今なのか、あるいはすでに終わっているはずのものなのかを判別するには、とにかく「終わり」を強くイメージすること。
その際、「共にあれること」への愛おしさがどんどん強く湧いてくるようなら、別れはまだ先のことでしょうし、もし静かな気持ちになるようなら、それはもう「さよなら案件」なのです。
判断に迷ったときは、ぜひお試しあれ。
今週のキーワード
さよなら、さよなら、さよなら