てんびん座
魅力的な言葉を咲かせる
無口と開花
今週のてんびん座は、「口重き男いきなり鶴のこと」(蟻塚尚孝)という句のごとし。さながら、自分の中で白い花が大きく開花していくような星回り。
無口な男がやっと口を開いたと思ったら、それが鶴の話だったという。ただそれだけの句なのだが、どこか華やかさがある。まるで「鶴」という一文字が、白い大輪の花のようにさえ感じられてくるから不思議だ。
それにしても、無口でいるということは、時にたくさんの言葉を費やす以上に雄弁である場合がある。
今日の時代においては、「話しあう」ことよりも「黙りあう」ことの方が有益な場面が増えてきているのではないか。そして、幾度となく言葉を飲み込み、想いを胸の内に戻すからこそ、人は自分の言葉を自分の中で育てていくことができるのです。
今週は、あえて即座に口にしたり、言葉にして吐き出してしまうことを控えることによって、発する言葉の強度をぎゅーっと高めていくことができるはず。うまくいけば、真に魅力的であれる瞬間がどういうものなのか、その一端を思い知っていけるでしょう。
師は必ず偽装する
「弟子が準備できたとき、師は現れる」という言葉がありますが、占星術家ディーン・ルディアはその続きとして「師は必ず偽装する」という言葉を付け加えるべきだと述べています。
これは例えば「どこが好きなの?」と聞かれてスラスラと答えられるような「好き」というのは、本当の「好き」かどうか怪しいものだということです。
その場ではうまく言葉にできず黙ってしまったとしても、後になって突然パッとわかったり、腑に落ちることがあります。掲句のような「鶴」も頭で考えた偽装がとれて初めて、ひらめくように降り立って来るものです。
心許なさをごまかさず、自らの内なる対話に意識を向け、じっと耳を澄ますよう心掛けてみてください。
今週のキーワード
鶴