てんびん座
とっておきの隠し味
「栗一つ」の解釈
今週のてんびん座は、「栗飯に間に合はざりし栗一つ」(矢島渚男)という句のごとし。あるいは、パズルの最後の1ピースのような自分自身を合流させていくような星回り。
「栗一つ」をどう読むかで、微妙に見えてくる光景が変わってくる一句です。
普通に読めば、口に入れるには不適格と見なされた栗がぽつんと取り残されている様子と思われますが、作者はあえて「間に合わなかった」栗と表現することで、「一つ」残された栗に、家族一同の夕飯に間に合わなかった子供のような愛らしさを吹き込んでいます。
そして今週のあなたのテーマは、その両者の意味を逃さず取りこんでいくことにあるのだと言えるでしょう。つまり、今まで役に立たないものとして疎外してきたような経験や習慣、関係性に対する愛着を再燃させつつ、自分の大切な一部として受容していくということ。
自分という作品を完成させてくれる「最後の1ピース」を、今週は追い求めていきましょう。
ユングの秘密
例えば、心理学者・ユングは子どもの頃、すでにそうした「最後の1ピース」をあらかじめ仕込んでいたようです。
6センチほどの木片を刻んで作った黒く塗った人形を、川岸で拾った石と一緒に小箱に入れ、自分だけの「偉大な秘密」として屋根裏部屋に隠しておいたのです。
そうして、このままじゃダメだという不安が訪れるたびに、取り出してきては眺めたり色を塗ったりして、自分の一部に取り入れ直していったのでした。
あなたにも、一時的に存在を忘れていた「秘密の人形」があるのではないでしょうか?
かつて一度でも、これぞ自分自身そのものだと思えたものがあるのなら、いまこそそっと取り出してみるべきです。
今週のキーワード
自分に自分を合流させる