
てんびん座
いのちのきほんの型

秘術ぐるぐる
今週のてんびん座は、「ベナール型対流」という現象のごとし。あるいは、生きるのに必要な熱(愛情や親しみ、活力)が全体に伝わって対流させていこうとするような星回り。
生物というのは、それ自体が1つの自己言及的なシステムであり、自分で自分というものを認識しながら、周期的に作り替えていこうという構造を備えています。物理学者のイリヤ・プリコジンはそのことを、もっと物理的な面から探究しました。
例えば、ここにコップいっぱいの水があるとして、十分に時間がたてば、平衡の状態になります。コップに氷を入れたとしても事態は同じでしょう。しかしここに、誰かが外部から熱を流し入れ続けると事態は変わってきます。つまり、水の中に熱の流れができる。これを「非平衡系」といいます。
プリコジンは地球上にはこの非平衡系があふれていると言っています(『混沌からの秩序』)。地球の大気はつねに太陽からエネルギーを得て運動しており、下から熱を加えてやれば、そこには「ベナール型対流」という現象が現われ、例えば鍋に火をかけると次第にお湯が上がってくるところと沈んでいくところができて上下に回転し、この動きによって鍋の底の熱が全体に伝わっていきますが、これは何千億もの分子が協調してパターンを創りながら運動しているのです。
この「ベナール型対流」こそ、ある意味で、生命の最も基本的なかたちというか、無秩序から秩序が出来上がるモデルであり、こういうものがないと生物は生きていけないんです。
4月21日にてんびん座から数えて「再誕」を意味する5番目のみずがめ座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、1周まわってどころ、何周もぐるぐるしてはじめて何かが腑に落ちてくるような瞬間を気長に待っていくべし。
歩く速度を落とす
昔の人はとにかくよく歩いたと言います。個人的にも、子どもの頃に親戚のおばさんの家へ遊びに行った際、ちょっとそこまで花火を見に行こうと言われ気軽な気持ちで付いていったら、なんだかんだと2つの山を越えさせられて、花火を見る頃にはすっかりくたくたになってしまった思い出があります。
おそらく、地図上の実際の距離で言えば、そんなに大した距離ではなかったはず。ただ、子どもの頃の自分にとってはとてつもない旅であり、山を越えるたびに世界がどんどん変わっていったのをよく覚えています。
それはおそらく、場所から場所への距離感は同じでも、高速移動やハイスピードに慣れ、電車やバスや自動車の速度で物事を感じたり考えたりするのが当たり前になってしまった現代人が捨て去ってしまった風景だったのでしょう。それで、肉体的な疲労以上に情報を処理する脳がキャパオーバーになってしまったのかも知れません。
その意味では、先ほどの熱を全体に広げる「ぐるぐる」というのも、こうした負荷をできるだけ軽減する仕方で自己を保とうするなかで自然と起きる生理現象として理解することもできるはず。だとすれば、たとえば時には普段よりゆっくりと歩いたり、意識的に猫のように暇な暮らしを取り入れることで、私たちは無意識のうちに自身で「ベナール型対流」を起こしているのではないでしょうか。
今週のてんびん座は、なにかと生き急ぎがちな現代社会においては、暇や不便や無駄を重ねることでかえって失われていた生命感が強まっていくこともあるのだということを、どうか思い出してみて下さい。
てんびん座の今週のキーワード
魔法陣グルグル





