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てんびん座
闇路に闇路を踏み添えて
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荒波は突如として
今週のてんびん座は、『或る闇は蟲の形をして哭けり』(河原枇杷男)という句のごとし。あるいは、現実から消し去ったはずの真実が改めて浮上してくるような星回り。
闇の奥で虫が鳴いているのでは、ない。虫をかたどり、ひとつの生命として息づいている闇そのものが哭いているのだという。これは一種の異様な幻視幻聴体験を詠んだ一句と言えます。
なお「哭」という字も、普通には使われることのない漢字であり、哀しみや痛みから思わず声を漏らしてしまうことを意味します。そんな非日常的な感情の荒波が、「或る闇」という修辞が匂わすように、ごく身近な日常にいるような虫のふりをして押し寄せてくる。そういうことが、どうも生きていると経験してしまうことがあるのだと、作者はどこかで思い知ったのでしょう。
それは家族やパートナーの自分の知らない一面であったり、知らぬふりを決め込んできた自分自身の一部かも知れません。現実の底に沈んでいたそれらの真実が、不意に闇にうごめく黒々とした蟲の姿をまとって、こちらに迫ってきた訳ですから、さぞや生きた心地がしなかったはず。
7月10日にてんびん座から数えて「他者との関わり」を意味する7番目のおひつじ座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、今まであえて見ないふりや気付かないふりをしてきた真実が、そんな風に迫ってくることもあるかも知れません。
「治す」より「治る」
現代人は不可解で残酷な事件が起こると、すぐに「うかがい知れぬ心の闇」と言って思考停止してしまいますが、今のあなたにはその闇をじっと見続けていくだけの気概や気力はあるでしょうか。
人を殺すにしろ、自分を殺すにしろ、人間は日々いろんなことを考えながら生きています。しかし、その考えの多くは、本当の考えを考えないためのものであって、そういう安全に生きていくための明かりやキラキラをあえて無視して、闇の中を歩ききったとき、なぜだか病んでいた心が不思議と治っていたりすることがあります。
自分の孤独だけが特別だと思い込んで、そこに囚われると、人は自壊していきますが、孤独の中に溶け込んで、取り入れていく人は回復する。そういう回復の道は、いつだって真っ暗闇で、そんな道を行こうとすると、世間からは気が狂っているなどと言われる。でも、それでいいのです。今週のてんびん座もまたそんな道をこそ選んでたどってみるべし。
てんびん座の今週のキーワード
回復の道
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