てんびん座
変化の波をとらえる
黒、荒、白
今週のてんびん座は、『黒南風や切傷に沁む運河べり』(秋元不死男)という句のごとし。あるいは、やがて色が変わっていくだろう予感を噛みしめていくような星回り。
6月の日本列島は各地とも暗く陰鬱な雨がちな天気がつづきますが、この頃に吹く南風を「黒南風(くろはえ)」と呼び、梅雨最盛期に吹く強い南風は「荒南風(あらはえ)」、梅雨明けの晴れた日に吹く南風を「白南風(しろはえ)」といいます。
梅雨前線が北上していく前後の天気を黒、荒、白と表す、こうした先人の感覚には心憎いほどの的確さがあります。しかし、漁船をあやつる漁師たちにとってはこの微妙な天候の変化が死活問題となり、さらに掲句では生活だけでなく内面にも無視できない影響を及ぼしている訳です。
ここでいう「切傷」とは、新たな季節の到来を受けて浮かび上がってきた古い記憶であり、言わば「魂の裂け目」のようなものとも言えるかもしれません。それがうずく。うずくだけに留まらず、時化った海のごとく次第に勢いを増してこちら(陸=築き上げた現実)の安泰を脅かしてくる。
しかし、掲句の作者はそれを表面的にはともかく、どこかで深いところで受け入れているようにも感じます。同様に、6月18日にてんびん座から数えて「精神的探求」を意味する9番目のふたご座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、破壊と再生への予感と覚悟に貫かれていきそうです。
野性は忘れた頃にやって来る
ひとりの人間の中には、経験や教育を通して洗練され磨き上げられた文明・文化的側面と、太古の昔から血や風土・風俗を通じて継承され続けてきた野性的な側面とが様々なレベルで絡みあい、対立しあいながら、なんとか共存しています。
そして当然、互いの側面がその都度おのずから抱く欲求や衝動を満たそうとしていく訳ですが、そのうちのどのあたりに自己の焦点を置いてバランスをとっていけるかで、本人のレジリエンス(精神的回復力)の在りようが大きく変わっていくのです。
そういう前提に立つならば、今のあなたはさながら大波にのったサーファーのように、重心の切り替えどころに直面しているのだと言えるでしょう。そしてそれは、みずからを破壊しかねないものと恐れていた不安や無秩序を取り込み、慣れ親しんでいく大きな契機なのだとも言えます。
その意味で、今週のてんびん座はどこか“こわさ”を感じる場面や状況と直面したなら、できる限り目をそらさずに向き合って、みずから踏み込んでみるべし。
てんびん座の今週のキーワード
レジリエンスの向上