てんびん座
からだごとぶつかっていくべきもの
納得が足りない時代
今週のてんびん座は、急かされて歩くことへの拒絶発作。あるいは、やたらと並べられる横文字をあらためて疑っていこうとするような星回り。
2021年に日本で新たに設置されたデジタル庁については、その人事についてネットやニュースを賑わせたのでその存在を認知している人は多いと思います。しかし、それが内閣の直轄機関であり、その担当大臣が内閣総理大臣を直接補佐する立場に立ち、通常は閣議決定を通さないと出せない他の省庁への勧告も直接出せるほど強い権限が与えられていることまでは、あまり知られていないのではないでしょうか。
つまり、デジタル庁とは内閣府より上位に位置する省庁であり、それだけでなく、巨額の予算がつき、民間企業との人材の出入りも自由だというのです。ジャーナリストの堤未果の『デジタル・ファシズム 日本の資産と主権が消える』によれば、それは「今世紀最大級の巨大な権力と利権の館」であり、さらに中央省庁向けの政府共通プラットフォームのベンダー(製造・販売元)には、国内のIT企業ではなくGAFAの一角であるアマゾンが選ばれています。このことが、いったい何を意味するのか。
堤はそれを「『今だけ金だけ自分だけ』の強欲資本主義が、デジタル化によって、いよいよ最終ステージに入った」一つの明確なサインだとした上で、「一つはっきりしていることは、私たちが今この改革を、よく理解しないままに急かされている」こと、そして、「わかりやすい暴力を使われるより、便利な暮らしと引きかえに、いつの間にか選択肢を狭められてゆく方が、ずっとずっと恐ろしい」のだと警告しています。
日本におけるデジタル化が、急速な中央集権化と監視社会の実現と歩調を合わせていることについて、堤は本書の中で様々な観点から指摘していますが、そこで台湾の若きデジタル担当大臣オードリー・タンの「社会がデジタル化することによって、民主主義は深まる」という見解を取り上げつつ、彼女のつけた次のような条件についても言及しています。すなわち、「ただし、決して権力を集中させてはいけない」のだと。
3月21日に春分、そして22日にてんびん座から数えて「見るべき対象」を意味する7番目の星座であるおひつじ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、自分や周囲の人たちの目を眩ませる魔法をどれだけ解いていけるかということがテーマになっていきそうです。
「わかる」とは何か?
もし仮に、学部の卒業論文で「それをやらなければ生きていけない」テーマを見つけて、それを扱うこと、という条件を出したなら、ほぼすべての学生は卒業することはできないでしょう。
つまり、最初から実現不可能なことが分かっている無茶な設定ということですが、しかしたとえそうだとしても、そのつもりで限られた時間のなかで真剣に取り組んでみたことが一度でもあったなら、何ごとかを心から理解しようという姿勢のようなものはできてくるのではないでしょうか。
もちろん、ある商品の値札をめくって、値段を知るくらいのテンションではそうはなりません。というのも、何かを「わかる」あるいは「わかろうとする」ということは、ただ知ること以上に人格にかかわってくる営みだからです。
そして、人格というのはある特定の感受性の働き方の癖付けであり、頭脳的な処理ではなく、身体的な納得を通して初めて育まれるものなのだとも言えます。
今週のてんびん座においてもまた、自分が身体ごとぶつかっていきたいテーマとは何だろうか?という問いがムクムクと湧きあがってくるはず。
てんびん座の今週のキーワード
デジタル化の波に逆らって