てんびん座
いたずら人生
ふくれ餅にあばれ餅
今週のてんびん座は、『それぞれにふくれ癖あり年の餅』(丸谷才一)という句のごとし。あるいは、人生に差し込んでくる偶然性を許して受け入れていこうとするような星回り。
「年の餅」とはお正月のお餅のこと。今では餅を焼くと言えばトースターが一般的ですが、ひと昔前まではまるい七輪で焼く家庭も多かったように思います。掲句の場合も、そんなかつての正月の思い出の一幕でしょう。
餅をいくつか金網の上に並べて焼いていても、決して同じようにはふくれない。順調に上にふくらんでいくのもあれば、横へずれて隣りの餅にくっついてしまうのもあれば、ついには不発で終わってしまうものもある。
そうした光景を前にして、作者は何を思ったのか。どこかの誰かさんのようだと思わずにんまりしつつも、それぞれのふくらみ方をもってばらつきのある光景に、どこかホッと安心する感じを覚えていたのかもしれません。
すなわち、人間の人生もそうであるように、幾つになったらこうあるべしと命あるものの展開を必然性でもって縛るのではなく、もっと「たまたま」や「もののはずみ」の余地があったり、「ふと」や「ひょんなこと」といった偶然性に任せていいじゃないか、と。
その意味で、1月7日にてんびん座から数えて「来し方行く末」を意味する10番目のかに座で満月を迎えていく今週のあなたにとって、自分のそれを重なるふくれかたの餅でも見つけてみるといいでしょう。
運命のいたずらへの先回り
もしあなたが自らこうと思い定めている未来の方向性が少しでもあるのなら、いまはかえって前へ前へと進んでいくことよりも、立ち止まって心のどこかで引っかかっている気がかりや胸のつかえと、きちんと向き合ってみることの方が大事かも知れません。
「まさか」の瞬間はいつやってくるか予想がつきませんし、自分だけは例外だと考えて「もしも」の時への備えを怠る者は、肝心なところで運命にいたずらされ、裁きの俎上にのせられてしまうものです。
この先も心の奥底で暗い不安をずっとふくらませていくくらいなら、いっそここらで思い切って「まさか」や「もしも」の正体を突き止め、不要な不安を消し去っておくのも悪くない選択でしょう。
いっそ、これまで胸の奥にそっとしまいこんできた不安の種があるならば、このタイミングで白日の下に晒してしまってはいかがでしょうか。
てんびん座の今週のキーワード
「まさか」や「もしも」と対話する