てんびん座
ひとつの終わりについて
なぜか心惹かれる光景
今週のてんびん座は、『蜩や山のプールに杉の影』(森潮)という句のごとし。あるいは、翳りゆく現実をひそかに予感していくような星回り。
山間部の学校のプールでしょうか。日が暮れかかって、あたりに「蜩(ひぐらし)」の声がこだましている。そんな情景を詠んだ一句。
天を焦がすような昼の太陽のもたらした熱気が、杉の香るひんやりとした山の空気と交わっていく。子供たちはすでに家へ帰り、目の前には人知れず大量の水をたたえた「山のプール」があるばかり。
どこか遠い過去や忘れかかっていた記憶を呼び戻してくれそうな光景であると同時に、すでにたそがれどきを迎え、いつまでも続くように思われた夏がすでに終わりに向かいつつある現実を象徴しているようでもあります。
太陽はすべての生命やそれを養うエネルギーの源でもありますから、1年のうちで最も太陽が明るく輝く夏の終わりは、栄えていたいのちの衰えや、やがてやってくる死を予感させるものでもあります。
その意味で、19日にてんびん座から数えて「受け入れざるを得ないもの」を意味する8番目のおうし座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、ひとつの終わりについてひとり静かに受け止めていくような時間を確保していきたいところです。
水面下での動き
この宇宙では「現状維持」などということ厳密には存在しません。
一見落ち着いていて特に変化のないように見える静的な調和すらも、実際には絶えざる動的平衡のもとで成り立っているに過ぎないのであって、逆に言えば、現状維持に徹しようという態度はすべからく自分の内部や周囲との動的平衡を破壊していかんとする宣戦布告に他ならないのです。
このことは、今のあなたならばよく分かるはず。まだ際立った人生の奔流のただ中や、特別なイベントの最中にいる訳ではないにしても、水面下ではギリギリのところまで葛藤が高まっていたり、今にも決壊寸前のダムのように「その時」が迫っていたり、そしていったん始まればそれが無視することができないよう、ドラスティックな変化をもたらすだろうこともうすうす感じとっているのではないでしょうか。
今週のてんびん座は、自分を取り巻く目に見えない力の流れがどこへ向かっていこうとしているのか、蜩のなく山のプールを前にしたときのように、できるだけ五感や胸の鼓動で感じとってみてください。
てんびん座の今週のキーワード
動的平衡≒諸行無常