てんびん座
火-非の精神
実存の根本にあるもの
今週のてんびん座は、「いい子」幻想の突破。あるいは、無意識的な性的抑圧への自覚を改めて促していこうとするような星回り。
かつて多数の信徒を集めたある新興宗教の教祖は、「性のエネルギーをロスしてはいけない」ということを繰り返し説いていました。それには宗教的な修行を通じて神秘体験を容易に実現させていく上で性的エネルギーが不可欠であるから、というきちんとした理由もあったのですが、それだけでなく、性というものがその教団内でかなり抑圧されていたということの裏返しでもあったように思います。
逆に言えば、これは性の自由化がだいぶ進んだはずの現代の日本社会においても、ある種の性的な抑圧は根強く残っているということでもあって、そうした風潮が残っている限り、性的なエネルギーを霊的なエネルギーに転換させることに失敗し、暴力と結びつくような形で暴発させてしまう危険と私たちはつねに隣り合わせなのだと言えます。
いくらヨガや断食、瞑想などを持ち出そうと、宗教の根本にはそうした性の問題があることには変わりなく、性的エネルギーの暴発の危険を避けるには、みずからの性的抑圧にどれだけ自覚的であるかどうかがきわめて重要になってきます。
その意味で、4月9日にてんびん座から数えて「同調圧力との対峙」を意味する10番目のかに座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、自分は無害で従順な「いい子」であるという幻想からいかに抜け出ていけるかどうかが問われていくでしょう。
真摯な過激さ
20世紀前半、ソ連からロシア共和国への急激な変化の中でロシアは政治・経済的には混乱の極みにありましたが、その時代に活躍したロシアの思想家ベルジャーエフは著書の中で「文化はひとつの妥協にすぎない。精神が客体化されて、この地上の世界と妥協するのである」(『孤独と愛と社会』)と述べていました。
これは一見奇異に聞こえるかも知れませんが、そこには過度に西欧化された教会や、文化全体に対する強い批判が込められており、その意味で象徴的な「父殺し」である彼の批判は、グローバル資本主義をはじめ、やはり西欧化した規範や価値観をを自明のものとして生きている現代の日本人にも鋭く突き刺さってくるはず。
「(制度化された)大学、研究所など、精神の死以外のなにものでもない」といった主張となるとさすがにそのまま同意する人は少ないかもしれませんが、「殺せると思うからこそ殺さない」境地にまで到達せんとすることがテーマの今週のてんびん座ならば、ベルジャーエフくらいの真摯な過激さがちょうどいいように思います。
てんびん座の今週のキーワード
精神とは何か。火である。精神の行う創造は芯の芯まで灼熱している(ベルジャーエフ)