てんびん座
素朴な人間になっていく
素朴の美
今週のてんびん座は、白く光る田舎の街の道のごとし。あるいは、素朴さやその美しさみたいなものに浸っていくような星回り。
教養人たちと交わって風流を楽しむというのは、金も時間も学識も美感もそろっていないとなかなか出来ない贅沢であり、教養とはそうした文化的コードに乗っかっていったり、楽しんだりする力のことを指しますが、あらゆる文化的コードが溢れかえって混線状態にある現代において最も教養があるのはむしろそうした伝統的な風流を捨て、教養人ぶらずにいられる人のように思います。
つまり、ただ素朴な人生やさびしい自然の風情にひたりたいと思う心が、肉体的にわいてくるまま、孤独な人間存在自身のさびしさを余計な知識や価値観をはさまずに直接感じていけるということ。それはたとえば、心がさまよう晩秋に、白く光る田舎の街の道を旅人となって歩いていく時に最も感じ取りやすいのではないでしょうか。
というのも、素朴の美というのはどこか色褪せたろころがあることが大切であり、新商品や新サービスが目まぐるしく展開されていく資本主義社会では色褪せた方が金の価値は下がる一方で、美的価値は逆に向上するのです。
29日にてんびん座から数えて「賑やかな交わり」を意味する11番目のしし座で下弦の月(離脱と解放)を迎えていく今週のあなたもまた、他者や現実との交わり方に関して少し見直しをはかっていくといいかも知れません。
子供時代モード
実際に家から駅までの見慣れた通勤路から、いきなり見知らぬ街角へ立たされたなら、さぞかし心細い思いに駆られるでしょう。ただ、はじめは戸惑っても、いったんその街なりの通奏低音とでも言いますか、耳慣れない喧噪にも、なにか特有の音楽性だったり、なつかしさのようなものを見出せば、自然と考えより先に手や足が伸びていってしまうはず。
当然、視覚情報としては、目に飛び込んでくるものは不安を呼び起こすばかりな訳ですが、生命というのは元来そんなに‟やわ”には出来ていませんから、素直で大胆な体が頭より先に反応する時は、まごつく脳などそっと置いてけぼりにしておけば良い。
自分の辞書にのっていない現実の匂いや音、肌ざわりや味に接したなら、さながら昆虫採集する少年少女のように、ただ無心でそれらに自分のからだを開いていくこと。耳なら耳、鼻なら鼻、指なら指と、まず一つこれで確かめようという、自分なりの‟先遣部隊”を決めておいてもいいかも知れません。
今週のてんびん座もまた、そうしてまだ自然体だった子供の頃の自分に戻ったつもりで、人やモノとの関わりに改めて向き合ってみるべし。
てんびん座の今週のキーワード
まごつく脳などそっと置いてけぼりにしておけば良い