てんびん座
ラッキー・ストライク!
こちらは9月13日週の占いです。9月20日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
まなざしの交錯
今週のてんびん座は、須賀敦子の「半地下の部屋の思い出」のごとし。あるいは、びっくりするような認識を掘りあてていくような星回り。
作家の須賀敦子が学生時代ひと夏をロンドンの屋根裏部屋で過ごしていた頃の話として、ゴミを捨てにアパートの階段をおりた際、思いがけず地下室の住人と鉢合わせになったことをきっかけに、次のような思い出について書いていました。
思いがけない窓のならんでいるのを見て、私はこどものころ読んだ話を思い出した。キエフだったか古いロシアの町に、靴職人がいた。その男は地下室のような部屋に住んでいたが、場所が場所だし、職業がらもあって、道を通る人たちの靴をいつも注意して見ている。靴から上は見えないのだけれど、靴を見ただけで、男にはそれを履いている人の寿命がすっかりわかってしまう。そんなふうにストーリーが始まるのだった
確かに町で建物のそばを歩いていても、私たちはほとんどの場合、自分の足の下がガランドウになっていることなど想像だにしません。須賀が出会った地下室の住人である老婦人も、まさにキエフの靴屋さんと同じような造りに違いないと直感したからこそ、彼女の記憶に深く刻まれたのでしょう。
14日にてんびん座から数えて「生きた交流」を意味する3番目のいて座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、こんな角度から自分に向けられていた視線があったのかという新鮮な出会いに不意に開かれていくことがあるかも知れません。
何を掘り当てればラッキーなのか?
「ラッキーストライク」と言えば、戦後日本でもっとも愛されたタバコの銘柄の一つですが、言葉自体を直訳すれば「運よく鉱脈を掘り当てる(命中!)」となります。ここで考えてほしいのは、では何を“当て”れば、今のあなたは思わずラッキーだ!と心から思うことができるのか?ということ。
宝くじの高額当選?望んでいた仕事のオファー?いやいや、仕事や人生設計については自分で何とかできるから、やっぱり縁のある人とのよい出会いや、意中の相手からの色よい返事でしょうか?
けれど、電車の中吊り広告やテレビで流れていたCMで見たような、そんなありふれた欲望のなまぬるい充足にスポイルされることを、本当にあなたは望んでいるのか。むしろ、それらではちっとも満ち足りてないという「大いなる飢餓」への自覚と、全身が湧きたつような渇望へいたることこそ、生きた交流であり、「当たり」なのではないか。
今週のてんびん座は、そうしてみずからの内にある底知れない欠乏を受け入れていくこと。そのこと自体が真に開かれていくべき出会いや認識なのだといえるでしょう。
てんびん座の今週のキーワード
考えるとは、身を交えていくこと