てんびん座
カオスをまとって秩序を織りなす
こちらは5月24日週の占いです。5月31日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
都市の無意識
今週のてんびん座の星回りは、家を造るホームレスのごとし。あるいは、ふと気付くとすぐそばにあったものと改めて出会い、それを自分のものにし直していくこと。
都市のホームレスたちは、人の流れの死角や隙間、所有者がはっきりしない場所、空白の領域など、そういうところに巧妙に見つけ、段ボールやベニヤ板、ビニールシートなどで組み立て式の家を造ります。
これは考えてみるとすごい能力で、本来なら就職面接などでも高く評価されるべきものだと思うのですが、しかし彼らからすればそれはそれでとんでもないことで、「それじゃあお前さん、代わりにここに寝てみろ」という話でしょう。
段ボールという素材は、流通のための梱包材であり、その都市に住む人びとが日々何を食べ何を使って暮らしているのかということも、段ボールを見ているとある程度分かってきます。だからホームレスの造る段ボールの家というのも、ある意味で都市の無意識から自然と生み出されてしまうものであり、それが何だとか、どれだけ価値があるものなのかと問うべきものではなくて、ある日ふと気付くと、変わってしまっている、という秩序を取り巻くカオスのようなものなのかも知れません。
26日にてんびん座から数えて「自分の言葉を持つこと」を意味する3番目のいて座で皆既月食(満月)を迎えていく今週のあなたもまた、自分が常日頃どんなものに取り囲まれ、それに親しんできたのかという答えを不意に得ていくこともあるはずです。
工藤直子の「ちびへび」という詩
暖かいのだもの/散歩は したいよ/ちびへびは/おうちに鍵をかけて/ぶらぶらでかけた
こんちわというと/小鳥は ピャッと飛びあがり/いたちはナンデェとすごんだ/あら おびに短したすきに長しねと/仲間は忍び笑いをした
ちびへびは急いで家にもどり/おうちの中から鍵をかけ/燃え残りの蚊取り線香のように/まるくなって ねむった/でも……/暖かいのだもの/散歩は したいよ
人に煙たがられたり、うまく馴染めなかったり、身を隠したがったり。そんな「ちびへび」を工藤さんはどこかくつろいで書いています。だからか、読んでいるうちになんとなく楽しくなってきて、自分でも書けるんじゃないかという気分になって、ノートを携え喫茶店へ駆け込んでいきたくなる。
ただ、こういう洗練された文章というのは、肩に力が入ると途端に書けなくなるもの。ホームレスが段ボールハウスに実際に暮らすことで家づくりに長けていくように、実際になりきってみないことには文章だって生まれてこないのです。
今週のてんびん座も、ホームレスや工藤さんのように、かたわらにあるカオスをひょいと自分の身にまとってみるといいでしょう。
今週のキーワード
「文は人なり」