てんびん座
危機と乗り越え
何でもないような顔をして岐路はやってくる
今週のてんびん座は、なだらかな形をまとった決定的な岐路のごとし。あるいは、真の悲劇とは何かということに想いを巡らせていくような星回り。
人生には怪我で片目を失うとか、火事で家を失うといった決定的な転換を求められるような事態が起きることがあります。ただパスカルは、妻子を失って悲嘆の底にある男が、いま自分の賭けた馬がスタートしたというだけで数分間有頂天になっていた様を描き、そこから、人間の悲しみが一見深そうに見えてそのじつ底の浅いものであることを辛辣に結論しています。
つまり、怪我や事故といった事態は大抵の場合、唐突に、ないし運命的に訪れるがために、じつは案外割り切れやすい悲劇と言えるかも知れません。そうした場合、苦悩の方向も範囲もはっきりしているがために、打撃は直接な代わりに単純なものとなるでしょう。
そしておそらく、人生には、それよりも目立たず、平穏でなだらかな形をまとっているものの、はるかに決定的な岐路が伏在しているに違いなく、こちらの方が悲劇と呼ぶにふさわしく、人は弱点を突かれて人間らしく悩むはず。
12日にてんびん座から数えて「影」を意味する8番目のおうし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、平穏さの覆いに隠されていた思いがけぬ“つまづきの石”に気が付いていくことになるかも知れません。
借金の効用
例えば、私たちは生きている間のほとんどの時間、自分が想像している以上に落ち着きなく、注意散漫で、本当の意味で集中することができないものですが、そういう過ごし方を少しも疑わずに“普通”のことだと受け入れてしまうことも、悲劇の一つと言えるかもしれません。
ただ逆に、何かの拍子で目の前の状況や特定の対象に没入できた際には、私たちは想像以上の力が発揮され、深い集中状態に入っていくことができます。そして、そうした事態をみずから引き起こしていくための最も世俗的な手段の一つに「借金」が挙げられます。
借金というと、人生の汚点とか人としてダメなことというネガティブなイメージがついて回りやすいですが、じつは「相手に今後の自分を見ていてもらう」という形で自分に負荷を課していく行為でもあるのです。
もちろんハナから返す気のない借金は相手も自分も不幸にしてしまいますが、少しでも借りを返すべく自分を成長させ、利益を作り出していくとき、そこには「相手に他人の変容に関わる喜びを与える」という貸し借りの相殺以上の‟+α”が生みだされていく訳です。
そういう意味では、今週のてんびん座もまた、誰にどんな借りを引き受けるのか、また、その際周囲をどんなふうに巻き込んでいくのか、といったことをどこまで楽しんでいけるかが問われているのだと言えるでしょう。
今週のキーワード
精神的or物質的な借金の申請