てんびん座
地殻変動のただ中
自己同一性の揺らぎ
今週のてんびん座は、荘子の「胡蝶の夢」の「俄然として覚むれば」という瞬間のごとし。あるいは、自分が別のもう一人の自分にそっくり入れ替わっていくような星回り。
中国の古典に荘子の「胡蝶の夢」という有名の話があります。
曰くむかし、自分が蝶になった夢を見た荘周という男の話で、楽しく飛びまわる蝶になりきって、のびのびと快適にしていた。ところが、ふと目が覚めてみると、まぎれもなく荘周である。いったい荘周が蝶となった夢を見たのだろうか、それとも蝶が荘周になった夢を見ているのか。荘周と蝶とは、きっと区別があるだろう。こうした移行を物化(万物の変化)と名づけるのだ、と。
ここで注目したいのは、「俄然として覚むれば(ふと目が覚めてみると)」という、荘周と蝶というまったく異なる次元への切り替わりの瞬間であり、次元の境い目の体験です。
そこでは二つの次元が互いに相対化しあっており、今ここにいる自分が自分であること、それは今ここに生きている「現実」が現実であることの自己同一性、安定性が揺るがされる体験に他なりません。
そして、その地殻変動にみずからも巻き込まれつつも、それを外側から傍観することが許されず、あくまで“内側”から体験するしかないのです。
3月6日にてんびん座から数えて「往来」を意味する3番目のいて座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、わたしとわたし自身のあいだで暗黙の何かが働いているような感覚を思い出していくことができるかも知れません。
融通無碍に状況を楽しむ
仏教では「異なった別のものが一つに解け合っていながら何ら障害もないこと」を「融通」と言い、また「何の妨げもなく他のものを拒否しないこと」を「無碍」と言い表します。
そうした融通無碍の境地へと実際に至ることは、世俗に生きる人間には難しいことですが、少なくとも「矛盾の中にありながら、その状態を否定しないでいること」というのは、今週のてんびん座にとってとても大事なテーマなってくるでしょう。
なぜかって?
そういう状態が、人間にとって一番サインや予兆やメッセージを「受け取る」ことができるから。あなたは今、まさにこれからの自分の行先を占っているのだと思います。四角四面に物事を割り切らず、しばし融通無碍な時間を楽しむつもりで今週は過ごしていきましょう。
今週のキーワード
パッと動いて、ハッと気付く