てんびん座
漸進的調和
愛着と工夫
今週のてんびん座は、「飛鳥仏けふも面長大根(だいこ)干す」(斉藤夏風)という句のごとし。あるいは、モチベーションを自分自身で高めていこうとするような星回り。
日本には全国各地にたくさんの仏像がありますが、中でも6~7世紀に作られた「飛鳥仏」は最古の部類にあたり、特徴としてどこか宇宙人やウルトラマンを思わせるアーモンド形の大きな目やくっきりと大きな鼻などのイメージが浮かんできますが、言われてみれば確かに飛鳥寺の飛鳥大仏を始め、どれも面長の顔をしています。
とはいえ、これは日常的にその顔を拝んでいるからこその着眼でしょう。はじめはなんだか不格好に見えた特徴が、何度も見ているうちに、何とも言えない愛着がわいてきた訳です。
そこに初冬の季語である「大根干す」を添えることで、自然と日々の労働や家事などのルーティンをこなすリズミカルな動きが重なりあっていく。その中には、やはりはじめは「何で自分がこんなことを」とあまりいい気持ちがしなかった動きもあったかも知れません。
22日にてんびん座から数えて「日常のリズム」を意味する6番目のうお座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、自分の日常に特に弾みをもたらしてくれているルーティンに改めて意識的に取り組んでいくことで創造性を高めていきたいところ。
老いと軽み
江戸時代の山伏で、全国津々浦々を旅した野田 泉光院という人がいます。現代人と比べると、昔の日本人というのはとにかくよく歩いたものでした。
この泉光院という人は、56歳で宮崎の佐土原を出発してから、6年間で南は鹿児島、北は秋田まで何度も往復しつつグルグルと旅を続けて歩きまくった様子を旅日記に残しています。やはり超人的な健脚で、その気になれば山道を一日に60キロも歩き通したそうで、しかも粗食と重労働の続く長旅のあいだ病気らしい病気もしなかったのだとか。
旅日記をパラパラ読んでいると、行く先々でいろいろな人に贈り物やちょっとしたボランティアをしている記述が出てきて、その機転の利きように目を見張るのですが、やはり老いたる者の強みとはこういうところに出てくる訳で、これもやはり日々のル―ティンに組み込んでいくことで培った「軽み」と言えるでしょう。
今週のてんびん座も、何はともあれ、健康な身体や鋭敏な感覚こそこれからの未来を呼び込む器と肝に銘じて、日々のちょっとしたひと工夫の積み重ねを心がけてみてください。
今週のキーワード
軽み、おどけ、とぼけ、ずらし