てんびん座
夢と風呂
空を飛ぶ夢
今週のてんびん座は、「ふわふわ」というオノマトペのごとし。あるいは、新しい言葉への切り替えをみずからに促していくような星回り。
「ふわりふわり」という重力が消失した浮遊感覚にも通じている「ふわふわ」というオノマトペは、心地よい解放感を感じさせると同時に、根づきもしなければ着地もしていないという根源的な不安をも感じさせます。
精神科医の新宮一成は、実はこうした不安定こそが言葉の根源にあり、人が繰り返し空を飛ぶ夢を見るのも、人が言葉を話すからなのだと言います。
振り返って考えてみれば、かつて嬰児として横になって上を見ていた我々人間にとって、言葉はもともと空のものである。それを獲得することは、横になっているだけの存在に別れを告げて、別の存在になるということである。元の存在はそこに取り残され、言葉が言葉の外の世界を暗示するときに、わずかに姿を現わすだけとなろう。空を飛ぶ夢は、このような根源的な変化の記録なのだ(『夢分析』)
つまり、人は人生の新しいステージへの適合がうまくできず、焦ったり、もがいたり、塞いだりするごとに、かつて赤ん坊から人間になった時にあれほどうまくできたではないか、話せるようになったじゃないかと、夢を通じて自分に言い聞かせているという訳です。
17日に自分自身の星座であるてんびん座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな自分が自分以外のものになっていく様を外側から眺めているような、不安定な新しさの感覚を味わっていくことになるでしょう。
余白を取り戻す
水曜日のカンパネラに『ディアブロ』という風呂をモチーフにした曲があります。体の芯まで温まる“親愛なる風呂”(ディアフロ)に、迷宮を探索して悪魔を倒していくあの懐かしのゲームシリーズ『ディアブロ』をかけている訳ですが、そんなハイセンスかつどうしようもない言葉遊びが特徴の歌詞の中でも、特に興味深い一節があります。
デビル デーモン サタンにルシファー 畑になってるアルファルファ
風呂に入れば誰でも昇天 念を押すけどあくまで昇天
デビル、デーモン、サタンにルシファー。すなわち悪魔や魔王、堕天使などの単語が並んでいます。風呂に入れば、そうした救いがたいように思える存在でさえも昇天、すなわちふわふわと新しいステージに入って救われていく。ついでに「あくまで」と「悪魔で」をかけて、昇天していくのです。
このあたり、『千と千尋の神隠し』でも体中ドロドロで臭気を放つ「お腐れ様」がお風呂に入って満面の笑顔をたたえた老人の顔になるシーンなども連想されます。あの場合は、元は「名のある川の神」だったのが、心ない人間が捨てた廃自転車や釣り糸などを捨てていったことで、ゴミやヘドロで汚れきってしまっていたのでした。
今週は、そうした汚れやほこり、癖みたいなものをキレイさっぱりそぎ落として、心身に余白を取り戻していきたいところです。
今週のキーワード
だんだん自分になっていく