てんびん座
生活にエモを
作家フルニエの2つの顔
今週のてんびん座は、アラン=フルニエの『グラン・モーヌ』という青春文学のごとし。あるいは、現実から失われた夢の感覚を取り戻していこうとするような星回り。
人が大人になるのは、「世界はどんなことでも起こりえるすばらしい場所などではなく、決まりきったことしか起こらない退屈な場所である」と気付いた瞬間であり、いったんそれに気付いてしまうと、かつて見たロマンチックで活気に満ちたファンタジーや希望はまたたくまにどこかへ消え去ってしまいます。
しかし、夢というのはこちらが消えたかと思っていると、突然や偶然を装ってまたいつの間にかよみがえってくるものでもあります。例えば『グラン・モーヌ』では、ある日曜日にサント=アガト村という田舎に暮らす足の不自由な15歳の語り手フランソワのもとに、17歳の謎めいた青年がやってきます。
その青年はたちまちフランソワや他の少年たちの憧れの的となり、怖れ知らずでどこか危うい雰囲気を持ち、疑いや悲観的思考をまったく寄せ付けない若者特有の大胆不敵さから、「大きい」「背の高い」または「偉大な」という意味の尊称「グラン」を付けて呼ばれるようになります。
モーヌはまだ見ぬものへの憧れへと強烈に結びついた人間であり、それゆえにやっと手に入れた幸福を受け入れられず、置き去りにしてしまうという悲劇を展開していきます。でもいまのてんびん座ならば、夢を夢のまま見続けようとするモーヌとは違う生き方ができるはずです。
21日にてんびん座から数えて「世界の中で果たすべき役割」を意味する10番目のかに座で先月に続き2度目の新月を迎えていく今週のあなたもまた、フランソワがもう1人の自分としてのモーヌを自分の人生に取り入れていったように、この世界で見られる夢を日常の中に取り込んでいくことがテーマとなっていくでしょう。
脳から心臓へ
現代における悲劇とは、何事においてもいまいち「本気になれない」ということの中にあるのではないかと思いますが、それはここ最近のあなたの姿でもあるかも知れません。
感情的な「エモさ」であれ、より身体的な生命力のようなものであれ、それらが根本的なところで満たされることがないために、思いっきり何かにチャレンジするとか、あるいは非現実的な理想や夢を追いかけるというモードへ、なかなか移っていけなかったり。
あるいは、本気で欲しいと思えるような相手ではなく、好きなのかどうかさえも自分で分からない半端な相手ばかりと付き合ってしまったり、付き合っていても相手とぶつかることを避けた結果、なんだか余計にさみしさが深まってしまったり。
こうした事態の本質というのは、言ってみれば「見てるだけ」という点にあるのではないでしょうか。脳が主体になると、どうしても何かを見て脳を刺激させること自体が目的化してしまう。そうなると、自分のことさえどこか他人事のようにモニタリングしている状態になっていくので、結果、何も大事なことは起こりゃしない。
自分を本気にするためには、身体や心から持てる力をしぼり出して、それまで止まっていた心臓に主導権を移し、少しでも高鳴らせていくこと。最終的に今週のあなたに贈る言葉は、その一点に尽きるでしょう。
今週のキーワード
自分を本気にさせていく