てんびん座
闇をとぼとぼ
蛇笏の場合
今週のてんびん座は、「夏雲むるるこの峡中に死ぬるかな」(飯田蛇笏)という句のごとし。あるいは、ひとつの決断。その重みを感じていくような星回り。
当時24歳の作者が、学業の中断を余儀なくして帰郷した、甲府の山中で詠んだ悔恨の一句であり、墓碑にも刻まれているもの。
視線は「夏雲」という高きところにありつつも、実際に自分が身を置いていかねばらないのは低き「峡中」であり、死ぬまでのその落差に引き裂かれながら自分は生きるのだという覚悟のほどが既に伺われます。
実際、帰郷して家業を継いだ後も作者の俳句への情熱が冷めることはなく、俳誌『雲母』の主宰となり、4男の龍太とともに親子二代で俳人の道を歩んでいきました。
そして、この天と地、時代と生まれのあいだに引き裂かれながらもそれを引き受け、重心を出来る限り低めていきつつ、何らかの決断を下していくというのは、今年のてんびん座の大テーマとも通じていくでしょう。
14日にてんびん座から数えて「地に足をつける先」を意味する4番目のやぎ座にある木星・冥王星に改めて焦点があたっていく今週のあなたもまた、これから歩んでいく道を確かなものにしていくためにも、今どんな決断が求められているのか改めて意識していくべし。
「治す」より「治る」
現代人は不可解で残酷な事件が起こると、すぐに「うかがい知れぬ心の闇」と言って思考停止してしまいますが、今のあなたにはその闇をとぼとぼと歩き続けていく気概はあるでしょうか。
人を殺すにしろ、自分を殺すにしろ、人間は日々いろんなことを考えながら生きています。しかし、その考えの多くは、本当の考えを考えないためのものであって、そういう安全に生きていくための明かりやキラキラをあえて無視して闇の中を歩ききったとき、なぜだか病んでいた心が不思議と治っていたりすることがあります。
自分の孤独だけが特別だと思い込んでそこに囚われると人は自壊していきますが、孤独の中に溶け込んで取り入れていく人は回復する。そういう回復の道はいつだって真っ暗闇で、そんな道を行こうとすると、世間からは気が狂っているなどと言われる。でも、それでいいのです。
できれば、今週はそんな道をこそ選んでたどっていきたいところ。
今週のキーワード
回復の道