てんびん座
風とできごとと人と
風は語る
今週のてんびん座は、石川逸子の「風」という詩のごとし。あるいは、こういう風にはありたくないというマイナスの願いがそっと心に刻まれていくような星回り。
「遠くのできごとに
人はやさしい
(おれはそのことを知っている/吹いていった風)
近くのできごとに
人はだまりこむ
(おれはそのことを知っている/吹いていった風)
遠くのできごとに
人はうつくしく怒る
(おれはそのことを知っている/吹いていった風)
近くのできごとに
人は新聞紙と同じ声をあげる
(おれはそのことを知っている/吹いていった風)」
これはほんの冒頭ですが、そよ風のようにやさしく書かれた内容の中に、怖いものを含んでいます。地上をそうそうとさすらっていく風(「おれ」)」は、何も言わない代わりに人間たちの本当のところを実によく知っているのでしょう。
確かに正義感というものを自分の身近なところで実際に貫くことは難しいし、大抵の人は変な巻き込まれ方をされたくないと、素知らぬていで知らんぷりを決め込むか、そもそも気付かないふりをするかがほとんど。
15日にてんびん座から数えて「心理的基盤」を意味する4番目のやぎ座で、下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、自分の内側にもうこれ以上持ち合わせていたくないものがあれば、それとなくそれをあぶり出し、そっと吹き消していきたいところです。
着地点
この詩は最後に向かうにしたがって、風に舞い上げられた言葉がだんだんと近くのできごとや人々に集束していきます。
「遠くのできごとに
立ち向かうのは遠くの人で
近くのできごとに
立ち向かうのは近くの私たち
(あたりまえの歌を/風がきいていった
あたりまえの苦しさを/風がきいていった)」
近くのできごとにどう立ち向かうべきか、今週のてんびん座にとって大切なことはほとんどその一言に尽きるように思います。
今週のキーワード
タンポポの綿毛飛ばし