てんびん座
響きあいとしての儀式
生活に厳かさを
今週のてんびん座は、自身のスイッチを探し当てたトニ・モリソンのごとし。あるいは、神秘的なプロセスにたずさわることができる場所にいること。
仕事に従事する人、特にフリーランスの働き手にとって、「夜型にすべきか、朝型にすべきか」という問いはずっと頭のどこかにあって晴れてくれない永遠のテーマと言えます。
黒人女性で初めてノーベル文学賞をとったトニ・モリソンの場合、自分の作品の執筆にとりかかる時間帯は時代によって変わっていきました。
1970年代から80年代にかけてのインタビューでは、夜に小説を書くと答えているものの、90年代に入ると早朝になったのですが、その理由が「日が暮れるとあまり頭がまわらなくて、いいアイデアも思いつかない」からだと言います。
執筆のために5時ごろ起床、コーヒーを作って「日の光が差してくるのを眺める」のが毎日の儀式であり、特に日光の部分は重要なのだとか。
「作家はみな工夫して、自分がつながりたい場所へ近づこうとする。(中略)私の場合、太陽の光がそのプロセスの開始のシグナルなの。その光のなかにいることじゃなくて、光が届く前にそこにいること。それでスイッチが入るの。ある意味でね」
その意味で、19日(水)に太陽がてんびん座から数えて「儀式と奉仕」を意味する6番目のうお座へと移っていく今週のあなたもまた、自分なりの仕方で日常を儀式化するべく工夫を凝らしていくことがひとつのテーマとなっていくでしょう。
「序」のはじめ方
先に引用したトニ・モリソンの言葉は、どこか「序破急」という能の時間の変化のあり方とも繋がるところがあるように思います。
「序」は、はじまりのこと。「破」は、時間が経って気持ちが熟してくる頃。そして「急」とは、クライマックスを迎えて能が終わる時のことを指しますが、能の大成者である世阿弥は「軽々と機をもちて」という言い方で、特に「序」の作り出し方を説いているのです。
つまり、序にある役者は、場のリズムにそっと自分を沿わしていくのがいい。
独壇場に立って、周りを置き去りにしてしまうことを強く戒めているのであり、これはまず場のリズムに入り込んで、それを自分のリズムにしてしまうのでなければ、良い舞台が成立しないことを熟知していたからこその言葉でしょう。
今週は例えば、太陽のリズムに入り込んで、それを自分のリズムにしてみるのもいいでしょうし、同じことを月でやってみてもいいかも知れません。
それが人間の自由さであり、そこからしか、本当の意味で深い響きあいも生まれてこないのではないかと思います。
今週のキーワード
神は細部に宿る