てんびん座
愛の言霊
橋本夢道の場合
今週のてんびん座は、「妻よおまえはなぜこんなにかわいんだろうね」(橋本夢道)という句のごとし。あるいは、思わず口をついて出たような言葉と臨終していくような星回り。
清々しいまでのノロケ俳句ですが、実際に作者は自由恋愛を禁止されていた奉公先の商店を、俳句を通じて知り合った妻・静子との結婚を機に解雇されたものの、その後死ぬまで愛し続けたといいます。
同じ作者は「無礼なる妻よ毎日馬鹿げたるものを食わしむ」という句でも有名ですが、こちらは食卓に気の利いた料理ひとつ出せない貧乏生活を妻に強いている自責の念が込められた、愛情の反語的表現でしょう。
とはいえ、作者は反戦俳句を多く作ったために獄中生活も余儀なくされた近代俳句の社会派を代表する人物でしたが、そうであったからこそ、妻に対してはここまで素直な言葉を句にすることができたのかもしれません。
23日(金)にてんびん座から数えて「普段は隠れている本音」や「無意識の活性化」を意味する12番目のおとめ座に太陽が入っていく今週は、作者ほどにとはいかないまでも、寄り添っていくべき自分の本音が言葉やイメージを通じて顕在化してきやすいはず。
気まぐれと受け流さずに、できるだけ真摯に受け止めていく姿勢を大切にしていきたいところです。
感情の発明
1977年に打ち上げられた2機のボイジャー探査機には、電子メッセージが積載されていましたが、そこには当時のアメリカ大統領ジミー・カーターの次のようなメッセージも含まれていました。
「これは小さな、遠い世界からのプレゼントで、われわれの音・科学・画像・音楽・考え・感じ方を表したものです。私たちの死後も、本記録だけは生き延び、皆さんの元に届くことで、皆さんの想像の中に再び私たちがよみがえることができれば幸いです。」
例えば、人類の送った音を聞いた異星人が、そこで初めて「愛」という感情を知るといったことも全くありえない話ではないでしょう。逆も然り。
それが音であれ、言葉であれ、何らかのイメージであれ、全宇宙を覆う暗黒の圧倒的な断絶を乗り越えてあなたの元へ届いたメッセージであり、そうであるからこそ、そこであなたは新しい感情と出会うことができるのです。
もし今あなたに何らかの強い感情を起こさせる相手がいるのなら、自分が死んだ後も誰かに伝え、この世に残しておきたいメッセージとは何だろうかと考えてみてください。
今週のキーワード
一世一代の代表句