てんびん座
率直に、堂々と
二重の表現
今週のてんびん座は、「握りつぶすならその蝉殻を下さい」(大木あまり)という句のごとし。あるいは、冷静さを保ちつつも言うべきことを言っていこうとするような星回り。
口語でありながら、ゆるみはなく、むしろ悲痛にちかい切実さのある句です。
この句の主人公が言葉を投げかけているのは「蝉殻」を粗末にしている人であり、主人公は自分の内に抑え込んできた怒りをできるだけ簡潔に、みずからの尊厳を損なわないように伝えていて、静かながらも確かな怒りが伝わってきます。
「空蝉」という雅語では、清冽なまでの怒りはここまで感じられなかったでしょう。
やはり、素朴な「蝉殻」という言葉が口語と組み合わさっているからこそ、自然がうみだした美しく繊細なものが無碍にされその価値を破壊されている事態へ反旗をひるがえすと同時に、その造化の神秘を讃えるという二重の表現たりえているように思います。
23日(火)にてんびん座から数えて「社会への希望」を意味する11番目のしし座に太陽が移っていく今週は、あなたも率直に、ただし威厳をもって、胸の奥底にしまっていた思いを伝えていくといいでしょう。
背中を押してもらうために
かつて武士は戦場において、「ヤアヤアヤア、遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ」と名乗りをあげたものでした。
さらに、その後には「我こそは~の国の住人、~の~なるぞ!」などと自分の出身地、身分、姓名、主張などを言い合っていく訳ですが、このようにかつては公式に戦う際にはかなりきちんとしたルールや手順が求められたのです。
ただ、13世紀後半の元寇の際には、自軍のリーダーが律儀に口上を述べ合ている間に、言葉の通じないフビライ軍に兵士たちがバッタバッタと討ち取られる事態を招き、さらに騙し討ちや奇襲が戦のつねとなる戦国時代に入ると、もうこうした伝統もほとんど廃れていったようです。
では、彼らはなぜ、そんな面倒で余計な真似をしていたんでしょうか?
一般的には周囲に証人をつくっておくことで、後で戦功の証明とするためと言われていますが、そうした実利的な駆け引きとは別に、あくまで儀式的なパフォーマンスとして戦っていたからなのではないかとも考えられます。
つまり、彼らにとって戦いとは先祖や国や地域を代表しての代理戦であり、それゆえにこそ、自分がどこの何者であるか明らかにし、相手が何を代表する者なのか知る必要があった。
今週のあなたの場合は、そうした武士ほどの面倒な手順は不要ですが、背景が自分に与えてくれる力や系譜を責任をもって引き受けるか、はたまた外的な駆け引きを通して他者を支配するのかが、問われていくようなところはあるでしょう。
今週のキーワード
切実さを大事にする