てんびん座
この世を漂う
魔法の一手
今週のてんびん座は、「揺れながら鼻毛を抜けば海匂ふ」(北大路翼)という句というのごとし。あるいは、深さではなく「浅さ」をこそ追求していくような星回り。
「揺れながら」とは、貧乏ゆすりのような身体的な所作というより、もっと実存的なもののように思います。
心が、自分という存在の根底が揺らいだ時に何をするかという点にこそ、その人間の真価があらわれてくるものですが、作者の場合はそこで鼻毛を抜いてみせた。
ただ、方法がなんであれ、そうして海の香りがしてきたというオチから鑑みれば、それは「西遊記」の悟空が追い詰められる毛を抜いて吹くことで分身を作り出すのと同じくらい、驚くべき魔法の一手と言わざるを得ないでしょう。
一方で、作者がやってみせたのとは対照的に、何か深いことを言ってみたり、やってみたりする人も多いかもしれません。
けれど、そういう深い人間であることを確認するための自己演出みたいなものは、はたしてこの令和の時代に機能する解決策なのか、ということも改めて自分に問いただしてみる必要があるはず。
9日(火)にてんびん座で上弦の月を迎えていく今週は、これまで自明のこととしてきた「深さ」への人間探求を、異なる方向へと転換していくことがテーマになっていくのではないでしょうか。
大洋感情
海というのは生命がそこから生じてきた広大な「子宮」であり、意識が個人的な形式をとる生態系内を覆っている「集合的無意識」の現われであるとも言えます。
人間の意識というのは、彼らがその中で生きて日々仕事をしている文化に応じて、人それぞれに特殊なカタチが与えられていますが、当然、そうした特殊化のプロセスには行き詰まったり袋小路に入り込む時というのが出てくる訳です。
そんな時に必要となってくるのは、ゼロからのやり直しなのではないでしょうか。
それは、文化によって制限されることもなく、境界線ももたなかった頃の自分への回帰であり、子宮に永遠にとどまることを望むのでなければ、それはこの世界との非常に深い一体感や、生き返るようなリフレッシュをもたらし、社会人である前にひとりの人間として健康的であるように思えます。
今週は身体と頭をゆるめましょう。もちろん、いかめしい深みはそこでは不要です。
今週のキーワード
揺れながら