てんびん座
<わたし>と原風景
目の前に再現されるもの
今週のてんびん座は、星の間に今よみがえる銀河旅行。あるいは、現在の自分に決定的な影響を与えてきたであろう原風景に、いま一度立ち返っていくような星回り。
自分でも気がつかないうちに、胸に、髪に、声に、染み込んでいるような匂いがふっと心の原風景を呼び覚ましてくる瞬間というのは、誰にでもあるのではないでしょうか。
普段はどこか意識の遠くに置かれているようなそうした原風景ですが、とりわけ21日(木)の春分の日にてんびん座で満月が形成される今週は、くだけた花火の一瞬を捉えるような精妙さで、そうした風景がよみがえってくるはず。
時代遅れのゲームセンターに迷いこんだように、ピコピコという電子音、人工芝に穴のあいたモグラ退治の台や、ジャンケンポンというやけに威勢のいい機会音声などが、めくらめっぽう脳内に展開されるとき、意識の暗闇のなかで体験していた原風景が懐かしい匂いや景色とともに再現されていく。
ああ、大事なことはここですでに受け取っていたんだなと気付くや否や、外がすっかり暗くなっていることに気が付いてしまう。
言うならばそんな瞬間を求めて、私たちは大人になってもあちこちをさまよい歩いているのかもしれません。
「見ている」と「見させられている」
地動説(太陽中心説)を証明した天文学者ケプラーは「私たちの眼球は外界のイメージを網膜において倒立したかたちで結像している」という重大な発見をした、知覚理論における先駆者でもありました。
つまり、私たちは普段、あるがままに外界を見ている訳ではなく、必ず交叉・倒立する像の交わりを通じて、何かを見ている、ということです。
しかも、そのことに私たち自身も気づいていない。これは応用して言えば、目に映る現実や行為は逆さまにひっくり返してみることで、より本来のありように近い状態を見通すことができる、ということでもあります。
たとえば、心の奥底にある願望や憧れを見ていくためには、自己分析などいくら重ねてもあまり意味はないんです。むしろ、外側からやってきて自然と目線が合うものをよく観察していくとき、自己の深部というのははじめて開示されていく。
こうして交叉・倒立が繰り返されていくことで、私たちの“見通し”は何ものにも囚われない状態(中心点)へと近づき、それが<わたし>を再構築していく契機となっていく。
今週は、ひとつそんなことを頭の隅に置きつつ過ごしてみてください。
今週のキーワード
目の逆説