てんびん座
浸透しあう人間たち
女子力よりも浸透力
今週のてんびん座の星回りは、川端康成の書いた男女関係(例えば『雪国』)のごとし。あるいは、揺れ動く浸透力として、他者との関わりの根本を感じとっていくこと。
川端作品に出てくる男女関係のあり方だったり、風景描写、物への接し方などを見ていくと、対象に対する「浸透力」ということが特徴になっているように思います。
登場人物の男は、ひどく繊細で、物静かで、それでいてどこかこの世を突き放したような眼差しの冴えのようなものが感じられますし、登場人物の女性にしても、情緒はあれども女性的なドロドロした情念が感じられません。
さながら「中性」という概念を広くとって、登場人物の男女をみんなその中に容れてしまっているかのような感じなのです。つまり、たまたま異なる生物学的な性別を伴なった人と人とが、互いに浸透しあう姿が、作品の主眼になっているのだと言えます。
今週のあなたもまた、男女の区別に限らず、地位や世代や立場の違いなどこの世的な文脈を超えたところで、隣りにいる人と深く浸透しあえているかどうかを確かめていこうとするかもしれません。
愛することと感性的であるということ
かつてD・H・ロレンスは、「現代人は愛しうるか」というテーマで書かれた文章の中で、宇宙的でデリケートな感覚を鮮やかに披露して見せました。その冒頭は次のように始まります。
「文明とは何か。それは発明品などよりも感性の生活のうちにこそ、明瞭な姿をあらわすものだ」
自分が生きた身体の内にあって、同時にいきいきとした宇宙の一部でもあることを実感するためには、時に文明の明かりや装置のスイッチをオフにしてみる時間が確かに必要なのです。
またその意味では、男女の仲にあっても、互いをあんまり「個人」として見なし過ぎるのは、感性的とは言えないでしょう。
今週のキーワード
中性一択