てんびん座
内界と外界の調律
フィチーノ派のイマジネーション
今週のてんびん座は、点と点を結んで星座を「命名」したみせた古代人のごとし。あるいは、内なる星座へ沈静していくことで、「汝自身を知れ」という古くからの言い伝えを思いだしていくような星回り。
偉大なる人文学者であり占星術家でもあったマルシリオ・フィチーノは、彼のパトロンであるロレンツォ・メディチへ宛てた手紙に次のように書いていました。
「私たちは内面に全天空を持っています。それは私たちの火のような強さであり、神々しい起源です。月は魂と身体のたえまない動きを象徴しています。火星は勢いを、土星は鈍さを、太陽は神を、木星は法を、水星は理性を、金星は愛を象徴しているのです。」
こうした天と一致した人生を生きんとすることを方法とした占星術においては、「汝自身を知れ」は「星々を知れ」と同義であり、魂は惑星の回転としてイメージされていました。
そこでは星々の放つ光の点と点を結んだ星座は、決して気まぐれや偶然によって結ばれた訳ではなく、おそらくいま普通に神話や物語を聞いてわれわれが感じる以上のことを、かつての人々は感じとり、その反映をなまなましく星座に託していたはずです。
今週はそんなかつて在った想像力の痕跡をそっと自分なりになぞっていくだけの殊勝さが、あなたの中に自然と生じてくるかもしれません。
学芸の猿として
ルネッサンス期の占星術家ロバート・フラッドは、今日の占星術家のあいだではよく知られた「自然全体の鏡および学芸の像」という図像を残しています。
その中心では「自然」と呼ばれる美しい乙女が置かれており、その右手は雲に隠れたる神(の意思)と鎖でつながれている一方で、その左手は丸い球の上の猿につながれている。
そして、この猿の名を「学芸」といい、人間の創意を司っています。
見ようによっては猿回しの芸のように思えてきます。
しかしこの猿は、自然に代わり、自然が口にすることのできない言葉を表現してくれる貴重な「分身」であり、その芸が磨かれれば磨かれるほど、天と地は離れることなく互いに緊密な関係を維持していくことが出来ます。
天(宇宙的タイミング)と地(現実的条件)のはざまに生きる人間にとって、それは調和的幸福の在り処を探り、あるいは、確かめる上で欠かせない営み。
今週は、自分の言葉がどんな自然とつながっているのか、自分はどんなところから思いを発しているのか、そこからまずをしっかり感じ直していくことを大切にされてください。
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