しし座
安全地帯の壁を取り払う
取り戻すべき未来
今週のしし座は、フーリエの「ファランステール」のごとし。あるいは、どれだけ嘲笑されようが、時代の先にあるべき現実の姿を自分なりに想像していこうとするような星回り。
ドイツに本社を置く世界最大級の統計データ会社であるStatistaが2023年に実施した調査によれば、マッチングアプリユーザーの61%をミレニアル世代が占めていたのに対し、Z世代はわずか26%だったそうで、彼らはマッチングアプリが登場する以前の時代を明らかに切望している傾向が見られたのだそうです。
こういうデータを見ていると、現代の若者世代と呼ばれるZ世代は他のどの年齢層よりも、無限に顔写真をスワイプしていく虚しさや既読無視や連絡フェードアウトの痛みから距離を置こうとしており、深い孤独感をこじらせているのだと言えます。その意味で、2025年はZ世代を中心に、現代人の日常からすっかり失われてしまった共同体体験や、深いつながりを取り戻していこうとする動きが活発化していくように思われるのですが、ここで思い出される事例の一つが、フーリエの構想した「ファランステール」です。
フランス革命と同時代に生きた思想家のフーリエは、戸建ての家は隣人を締め出す無駄な障壁であり、疎外感と孤独感を呼び起こすと考え、富と権力のヒエラルキーから離れた自然豊かな場所での、共同生活の利点を生かした自給自足の1620人規模の農村協同体を構想しました。それらはフランス北部のギースという田舎町で最初のファランステールとして実現されたり、アメリカの進歩的な人びとによって幾つかの箇所で輸入され実践されていきました。
もちろん、現代においてこうした大規模の農業協同体を一から作ろうとするのは現実的とは言えませんが、少なくともたかだか数十平米の空間とプライバシーのために孤独もいとわず大金を払い続けるような生活と対照的な生活のありようを想像する意味では、そうしたフーリエの考えや実践例は今なお振り返るだけの価値があるのではないでしょうか。
1月7日にしし座から数えて「予言」を意味する9番目のおひつじ座で上弦の月(行動の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、どんな家や生活こそが理想的なのか、改めて考え直してみるといいでしょう。
地域通貨のようなパン
例えば、『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』の著者である渡邉格が提唱しているのは、ただ単に「片田舎で余裕のあるスローライフを実現して経済競争から脱却しよう」といった絵空事の話ではなくて、むしろ資本主義の辺境において、パンを通じて誰にも搾取されない理想的な循環システムを創り出そうという革命運動でした。
資本主義は利潤を求めてどこまでも増殖していく反作用として、環境破壊や公害、添加物や農薬による健康被害、ブラック企業や低賃金などの労働問題など、さまざまな形で人の生活や地球環境を蝕んでいきますが、そうした経験を嫌と言うほど経た渡邉は、自分の時間とお金と健康を、誰にも搾取されないために、資本主義の「外」へ出ようとするのではなく、その内部にささやかな安全地帯を作ろうとしたのです。
僕らは、地域通貨のようなパンをつくることを目指す。パンをつくって売れば売るほど、地域の経済が活性化し、地域で暮らす人が豊かになり、地域の自然と環境が生態系の豊かさと多様性を取り戻すパン
今週のしし座もまた、生の豊かさと喜びを守り、高めていくために、どんな風に自分なりの「パン」作りをしていけるかを、改めて考えてみるべし。
しし座の今週のキーワード
資本主義の「内」に安全地帯をつくること