しし座
気持ちよく、ゆらいでいく
受け入れること、祝うこと、寄り添うこと
今週のしし座は、『吾妻(あずま)かの三日月ほどの吾子(あこ)胎(やど)すか』(中村草田男)という句のごとし。あるいは、自分のことなんかよりももっと大事なことがそこにあるのだと実感していくような星回り。
古来、数限りない人間が、それぞれの思いで月を仰いできましたが、月の満ち欠けに去来する生死の気配を見出すという感受性の在り方は、もっとも古く、もっとも根源的なものなのではないでしょうか。
掲句では、暗闇に覆われた夜空に灯りをともすかのように、すっと伸び広がってきた「三日月」を、新たな生命を宿すことの神秘性をよく伝える比喩として用いています。確かに、前かがみの胎児の姿は「三日月」に通底するものがありますし、作者としても新たな生命というのものは自分たちがみずからの手でこさえたものというより、この世を超越した向こうの世界から“ギフト”として贈られてきたものであるという実感があったのでしょう。
「吾子を胎すか」という言い方からうかがうに、月が少しずつ膨らんでいくことに対して、自分がたまたま居合わせることしかできないのと同様、子をさずかるという神秘に対しても、ただそれを受け入れること、祝うこと、寄り添うことしかできないのだ、と作者はここで自分に言い聞かせているのかも知れません。
9月23日にしし座から数えて「再誕」を意味する3番目のてんびん座への太陽入り(秋分)を迎えていく今週のあなたもまた、「我」の世界であるとか、みずからの想定の範囲を超えたところで起こりつつある出来事にただただ寄り添っていくべし。
芽生えのプロセス
赤ん坊であれ、何らかの作品であれ、自身の中の未熟さや未練というものは、いつまでも自分の中に冷凍保存されているということはありえず、いつかは核分裂して自分の元から離れていく宿命にあります。
生命の本質は「ゆらぎ」にあり、鞘におさまった剣のような完璧な調和というのは長くは続かず、時の経過とともに必ずズレていく。これが「芽生え」の決定的なプロセスであり、種子から芽が生え土壌をつらぬき光のもとへと達したとき、この世界へと向いた生命のダイナミックな展開が始まっていくのです。
それは言い換えれば、これまであなたが内側に抱え込んでいた何かがようやく解き放たれ、日の目を見ていくことになる転換点なのだとも言えます。
今週のしし座は、そのすべての責任を取るつもりで(ただし直接手は出さず)、しっかり経過を見守っていきましょう。
しし座の今週のキーワード
命はいつまでも一つところに留まることなし