しし座
落とし穴にあえて落ちる
別の仕方で
今週のしし座は、原動力としての単純な拒絶。あるいは、それ自体では「なんでもないもの」をますます許容していこうとするような星回り。
生きる時代は選べないとしても、人は今まさに進行中の出来事や事態にたいしては、どんな態度をとるか、どうやって、どの程度それに関わるかを選ぶことができます。
例えば、現代ではテクノロジーの多くが、ごく一般的な生活者の内省や好奇心、ないしコミュニティに属したいという欲望をつりあげるためのサービスデザインに利用されており、私たちはTwitterやTikTokのような人間の根源的な欲求を乗っ取ることで利益を吸い上げるプラットフォームに、知らず知らずのうちに日々の行動や選択を囲い込まれている訳ですが、少なくともこうした資本主義的な“決定論”がはびこる荒涼とした景観のなかにますますはまり込んでいこうとするか、それともそれをどうにかして別の仕方を模索するかの分岐点に立っていくことはできるはず。
すなわち、「休日」ということ1つとっても、単に疲弊した心身を“リフレッシュ”して仕事に戻ったり、将来を見据えて生産性を高めるために備えたりといった、現代において一般的に共有されている“荒涼とした”ストーリーのなかに埋もれている、曖昧さだとか、非生産性といった、生きていることそれ自体がより広い領域で内包している価値の源泉を探っていくこともできるんじゃないか、と。
こうした模索の原動力にあるのは、「今・ここ」や既に身近にいる人たちだけではなんとなく物足りないと思うよう、誰か何かに仕向けられていることへの違和感、そして単純な拒絶です。
その意味で、5月28日にしし座から数えて「いきがい」を意味する2番目の星座であるおとめ座で上弦の月を迎えるべく光が戻っていく今週のあなたもまた、SNSの通知に気をとられるままの自分でいる代わりに、まずは現代人が「生産的」だと認識している行動や選択を疑ってみるところから始めていくべし。
スイングバイとしての白うさぎ
この世では、ときどき機械的に反復される慣習の世界に決して囲い込まれない決定的な偶然が起きるものです。それは何かの拍子にひょいと飛び出してきては、『不思議の国のアリス』の白うさぎのように、私たちを「その日その日をどう送ろうか」とか、「いかに安楽をキープするか」とか「何を食べ、誰と寝るか」といった目の前の反復的な退屈の迷路の外へと連れだしてくれるのです。
ただ同時に、そうして不意になにか見慣れないものが飛び出してくることほど、人々の不安を掻き立て、不穏な空気が醸し出される状況はないでしょう。なにせ、これまでこれこそが現実とばかりに思っていた世界の方が幻想で、ウソっぱちで、欺瞞(ぎまん)だらけであることに気が付いてしまうかも知れないから。
けれど、そこでたじろいではいけません。お笑いライブの席に座ってせっかくの演目を真面目に鑑賞することほど滑稽な光景はないのと同じで、もしもいったん事が起きてしまったのなら、あとはポップコーンを片手に笑い転げながら、足元の「現実」がガラガラと崩れていく精神の冒険をただただ楽しめばいい。今週のしし座は、それくらいのつもりで思いきり資本主義的なコードの制約からおのれを解き放っていきたいところです。
しし座の今週のキーワード
白うさぎとしての「何でもないないもの」