しし座
めぐりあう時間たち
異なる時間の交わりに立つ
今週のしし座は、『平凡な言葉かがやくはこべかな』(小川軽舟)という句のごとし。あるいは、生まれ変わりつつある我と世界との邂逅(かいこう)に胸いっぱいになっていくような星回り。
「はこべ」は春の七草にも数えられるメジャーな風物ではあるものの、日当たりのよい野原や道ばた生える背の低い雑草で、その白く慎ましい小さな花も含めて、実際の姿かたちと名称とを即座に一致させられる人はそう多くはないはず。
それでも、作者が普段なら足早に通りすぎ、視線を投げかけることすらない道の傍らの「はこべ」の存在に気が付いたとき、前へ前へとまっすぐに進んでいくだけになりがちな自身の時間の流れが決定的に変わってしまったのかも知れません。
春、夏、秋、そして冬を過ぎてもそれで終わりではなく、また春がやって来る。葉を落として枯れ果てていた野の草木も、再び芽吹いて花が咲く。人の一生を限りあるものにする時間は無情で冷たく感じられる時もありますが、一方で四季を繰り返しながら永遠にめぐりゆく時間は、私たちに束の間の夢を見させてくれもします。
平凡で、何気ない言葉さえも、そうした循環し、めぐりゆく時間の流れと交わることで、「かがやくはこべ」としての詩のことばとなって、私たちに語りかけてくれるのです。
15日にしし座から数えて「愛情表現」を意味する5番目のいて座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、循環する時間の流れとの交友録としての自己表現に、不意にたどり着いていくことでしょう。
はかなさこそ夢の醍醐味
美というものは、本来、何かを欠いたものです。完璧な計算や合理主義からは、美はおろか、ドラマさえも生まれてきません。楽しい時間はあっという間に過ぎて、余韻が残るからこそ「楽しかった」記憶として残るのであり、ほんとうに愉しみ尽くしてしまえば、夢の残骸ばかりが無残に残るだけ。
だからこそ、人は実現可能な夢ばかり追うように出来ていないのかも知れません。それじゃ、あまりに味気なく、つまらない。むしろ、人は醒めても醒めても醒めきれないほどたくさんの夢を膨らます一方で、その儚さを愛おしみつつ、それらを惜しげもなく忘却の川へと流していくのでしょう。
その意味で、今週のしし座のテーマは「絶妙なところで現実感を外す」ということになってくるかも知れません。余韻が残るほどに非現実的な夢を無意識の中に仕込んでいく。今はそういう時期なのだと思って、過ごしてみてください。
しし座の今週のキーワード
もうひとつの現実を生きる