しし座
おとな時間を殺す
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今週のしし座は、人生の<しっぽ>のごとし。あるいは、人生にひとつ「花」を咲かせていこうとするような星回り。
哲学者の山内志朗は『目的なき人生を生きる』という著書の中で、「人生にも<しっぽ>があるのだろうか」という問いを立てた上で、次のように述べています。
報われることを、しかも功利主義的にコストとリターンの合理的関係や効率性を求めるのであれば、エコノミック・マシーンに改造してもらうのが一番よい。人生の<しっぽ>を生き延びるためには、依存症であろうと生きるスタイルを見つける必要がある。一番重要なのは、「時間を殺す(kill time)」ことだ。
ここでは人生の<しっぽ>というものが、特定の目的や利益に回収されない“余りもの”の時間として語られ、そういう時間をよりよく過ごす仕方として、よい結果を出して褒めてもらおうという応報思想的な行動様式の代わりに、純粋に目的そのものが追求され、行為の成果がその行為のなかに顕現するような修行的行動様式が推奨されている訳です。
続けて、「熱狂しながら休らうことができること、それを「花」と呼ぼうと、アリストテレスのように「エネルゲイア」と呼ぼうとどちらでもよい」と語っていますが、特に意味はないのにどうしてもやめることができず繰り返してしまう癖のようなものという意味では、哲学することも酒を飲むことも桃鉄をプレイすることも、人生の<しっぽ>をよりよく生きるための試みなのかも知れません。
1月15日にしし座から数えて「遊び」を意味する3番目のてんびん座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな“余りもの”を持て余さないでいられる、自分なりの人生の<しっぽ>の過ごし方への実感を深めてみるといいでしょう。
純粋体験としてのナンセンス
寺山修司の作品に『大人狩り』というドラマがあります。これは革命を起こして大人を皆殺し、または後楽園球場に大量監禁したあと、こどもばかりの世の中がやってきて…、こども政府はこども憲法を発布するというのが、その大筋。
ところが、世の中を支配する側にまわったこどもたちは、どんどんその残酷でユーモラスな本質を露わにしていき、つぎつぎとおとなたちの作った価値を破壊していくのです。例えば、こどもの詩人が登場してきて、「童話」と「教科書」を焼却しようと提案し、その代わりに次のような詩を発表するのです。
6663 6633 633……1!
1!
「おいおい、これにどんな意味があるの!」なんて思ってしまった人は、きっと自分が思っている以上に“おとな”側なのでしょう。というのも、こどもというのは、こうした呪文的な口ざわり、ロクロクロクサンといったようなナンセンスさ、意味のなさにこそ詩的ロマンを感じるものだから。
その意味で、今週のしし座もまた、意味の川を簡単に渉ってしまうのではなく、人生への好奇心のさきがけとなるような、もっとわがままな欲求を追求していくべし。
しし座の今週のキーワード
熱狂しながら休らうことができること