しし座
身悶え番長
欺瞞をおちょくる
今週のしし座は、『梨を落とすよ見たいなら見てもいいけど』(外山一機)という句のごとし。あるいは、血の通ったコミュニケーションへと周囲を巻き込んでいこうとするような星回り。
「梨を落とす」こと自体はそれほどポジティブでも積極的な行為でもありませんし、言わなければまず誰も見ないでしょう。にも関わらず、「見たいなら見てもいいけど」と言うのは、やっぱり誰かに見てほしいわけです。では、作者は自分の何を見てほしいのか。
ここで問題となってくるのは「梨を落とす」という作者の書き方です。「梨が落ちる」であれば、みずからの意志でそうしている訳ではなく、単に情景描写となる訳ですが、それをあえて「梨を落とすよ」と書いているのは、そもそも作者が「意志の働きによる作為によらず、おのずからできた俳句をよしとする」といった、伝統的によしとされてきた俳句観みたいなものを疑っているからではないでしょうか。
「そうは言っても好きで俳句詠んでる訳だし、やっぱ見てほしいじゃん、ほらほら梨を落とすよ」とかましておいて、「くだらねえ!」というツッコミを待っている。それで、「でへへ」とかなんとか言って笑いたいし、笑い合いたい。これは「たまたますばらしい一句ができたんです」といった言説の欺瞞をおちょくって、それを体を張ってネタにしているのだとも言えます。
9月26日にしし座から数えて「コミュニケーション」を意味する3番目のてんびん座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、みずから力みをほどいたところへ降りていくべし。
わが身のデッドスペースを知る
愛してくれとまでは言わずとも、誰かにそばにいて自分を見ていてほしい、支えてほしい、活力を注いでほしいと願うのは、人間にとってごく当たり前の要求であり、できればこの世の果てまでそうしてほしいとつい思ってしまうのが、人の業というものです。
けれど、もしかしたらあなたの心や体には、さながら心の押入れのように、いまだ吐き出しきれていない願いや思いを押し込めて見えないようにしている、自分でも忘れてしまったか思い出せなくなっているデッドスペースがあるのかも知れません。
そして、その戸を一度開けてしまえば、雪崩のように積年の思いや今まで隠れていた感情が止めどなく湧いてきては、それを吐き出さずにはいられなくなるような。
今週のしし座はいわば、それくらいのわだかまりを思いがけず放出していくようなタイミングとなっていくことも十分にあり得るはず。ちょうど掲句の作者のように、思わず身をよじるような痴態を自分に許してあげるだけの余裕をもっていきたいところです。
しし座の今週のキーワード
身悶えの底にあるもの