しし座
密猟と倫理
「共愉的」な関係性
今週のしし座は、作者の意図を超えた読みを実践する「密猟者」のごとし。あるいは、共に愉しみ合えるような関わりを広げていこうとするような星回り。
フランスの社会理論家ミシェル・ド・セルトーは、社会のシステムや規律に表だって反逆するのではなく、公共的な文脈をちゃっかり自分たちの利益となるよう働きかける人びとの戦略的行為を「密猟」と呼びました。
高度に産業化した現代社会に生きる私たちは、ともすると対人関係であれサービスや作品であれ、単に<消費する>という形でものごとに関わりがちですが、「密猟者」たちは人生/生活を豊かにするための大切な“道具”としてそれらと関係を結び、作品やサービスを媒介に同じ嗜好をもつ人ともつながっていく。
こうした関係性をイリイチという思想家は「共愉的(コンヴィヴィアル)」と名付け、テクノロジーの進歩によって逆に道具に使われ、規定されてしまう人がますます増えていく中で、そうした道具の使用の仕方こそが私たちの自由を制限するのではなく、拡大していくのだと説いたのです。
その意味で、同人誌やコスプレなど二次創作に携わる特定作品のファンたちも、与えられたものをただ無抵抗に受容するだけに終わらない存在=現代の密猟者であり、SNSなどでファン同士が互いにより豊かな“道具”の使用法について教えあっていくファンカルチャーというのは、いつだって産業側から食い物にされないための戦略拠点となり得るのだと言えるのではないでしょうか。
9月23日にしし座から数えて「遊び」を意味する3番目のてんびん座に太陽が入座する(秋分)今週のあなたもまた、そんな密猟者のひとりとして着々と暗躍していくべし。
アランの考えていた礼儀作法
もともと「正しい/間違っている」、「攻撃してもよい/悪い」といった単純な二分法に陥りやすいTwitterが、ますます人々の二極分化を促しているように感じる昨今ですが、フランスの哲学者アランは幸福に関する断章集のなかで、「ほんとうの生き方」の中に「楽しませるべし」という規則を入れたいという旨について書いていました。
それはおべっかを言ったり、調子よく相手に合わせるということではなくて、(とりわけ若者に対しては)推測に過ぎないときは最も良い方にとり、立派な姿に描き出すことで、彼らは自然と自分をそのように思い込み、やがてそのような人間になるだろうといった未来への企図に基づく祈りにも似た行為なのだと。
もちろんどんな人にだって誤りやねじれは存在するものですが、厄介なのはそれを感情的にこじらせることであり、ここでいう相手を「楽しませる」とは、「つまり荒ぶる情念をなだめる体操」なのであり、アランの言う通り「ほんとうの礼儀作法とは、むしろよろこびが伝わって行って、すべての摩擦がやわらぐところにある」のかも知れません。
今週のしし座もまた、みずからの実践すべき行動規則やその影響について改めて見直し軌道修正していくことがテーマとなっていくでしょう。
しし座の今週のキーワード
楽しみ、楽しませること