しし座
俺のコレポン
美しいアナクロニズム
今週のしし座は、内密的に夢を見る物質的想像力のごとし。あるいは、あえて時代に逆行してでも自分なりの美学を貫いていこうとするような星回り。
かつてウィリアム・ブレイクは「想像力とは状態ではなく、人間のエグジスタンスそのものである」と書きましたが、科学と詩を哲学的に統合しようとしたガストン・バシュラールはそれをさらに強調させて次のように述べていました。
かつて、この錬金術的夢の時代ほど、人間が世界に対して真摯であったことはない。なぜならひとつの物質だけでもその宇宙的夢想の力によって、夢見るひとを世界の奥底までしばしば導いてゆけたからである。これは物質的想像力による夢想の<参加>した特色を示す新しい証拠である。また錬金術は、世界の生命と完全に一致することを希求すればするほど真摯になる想像力、物質的想像力の理論のため、無数の訓練を含んでいる。(『大地と意志の夢想』)
この錬金術師の「真摯さ」とは、人間と物との内密的な交感(コレスポンダンス)、その親和の深まりであり、それは固定された視点から客観的かつ還元的に記述していこうとする近代的な思考をこえたものを提出してくれるのだと言えます。それはある種のアナクロニズムではありましたが、無機質に殺菌されきった世界で人間は幸福ではありえないと心から痛感していたバシュラールの、起死回生の一手でもあったように思います。
7月14日にしし座から数えて「改変、改造の労」を意味する6番目のやぎ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、そのままではとても受け入れられない現実や世界の実像を、いかに自分なりに作り変えていけるかということに命を燃やしていきたいところ。
異質文明を夢みて
時代を超越した独自の感覚を貫いていった人間として、例えば作家の稲垣足穂がいます。彼は『水晶物語』という作品の中で、「何にしても人間よりは樹木の方が偉い。樹木よりも鉱物、それも水晶のようなものがいっそう偉いのだ。人間も早く鉱物のようになってしまったらよかろう」と書いていました。
そういう眼で人間を眺めてみると、確かにごく稀に鉱物や水晶さながらにドキリとするような妖しい輝きを放つ人間が存在しているような気がします。そうした鉱物人間は、道端に転がっているただの石ころ共とは違って、その上に全く異質の文明の可能性を夢みたり、信じさせるだけの何とも言えない磁力があるのです(足穂自身もまたそういう人でした)。
そして、そんな磁場に思わずまなざしが吸い込まれていくとき、人間の最も深い感情である憧れの想いがそっと引き出されていくのです。おそらく、鉱物を前にした錬金術師たちもまた、そうした妖しい光をまなざしに宿していたはず。
鉱物に較べると、大方の生物はまるで泡だ、と私は思っているのです。
今週のしし座もまた、できればこれくらい断言できるだけの確信を胸に抱いていきたいところです。
しし座の今週のキーワード
普遍的な美しさに魅入られる