しし座
笑みを取り戻す
意識を遠くに飛ばしてくれるもの
今週のしし座は、「春眠の底より笑ひかけむとす」(西山ゆりこ)という句のごとし。あるいは、明るい未来の方へと惹きつけられていくような星回り。
「春眠暁を覚えず」と言うにはまだちょっと時季が早いですが、冬が終わり春がますます近づいてくると、寝心地がよくってついつい夢の世界に遊ぶのに夢中になってしまいがちです。
掲句は、二度寝の真っ只中なのか、それともまだ出しっぱなしの炬燵に入ってうたた寝でもしているところなのか、いずれにせよなかなか目が覚めない誰かや自分のふとした表情に注目した一句。
それはまだ明晰な意識では、この世の明確な言葉遣いではつかまえきれない、あいまいであやふやな現実の萌芽ではありますが、胎児の頃に見ていた夢のごとく、手でさわれるのではないかと思えるほどになまなましく、今ある現実を決定的に変えてしまいそうな予感に満ちていたのでしょう。
それは新鮮でありつつも、かつてどこかで見たことのあるような不思議な印象を作者に残したのかも知れません。
17日にほかならぬ自分自身の星座であるしし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、そうした不思議な懐かしさに満ちた決定的な予感に衝かれていくことになりそうです。
詩と自然が必要な理由
例えば猫などもそうですが、この世には合理的にその存在意義が説明できないにも関わらず、「なぜこんなものが?」と思ってしまうくらい人々によって熱烈に大切にされ、時代や地域を超えて愛され続けているものがあります。
そして大抵の場合、そういうものは現実の異なるレイヤーへの入り口だったり、別の世界へ意識を飛ばしていくために巧妙に配置された装置だったりする訳です。
もちろん普段はみな、自分のいる世界にとどまってあくせく働いていますから、そういうものは特に役には立ちません。しかし、そうして何の役にも立たず、ゆえに視界から遠のいて、透明な存在になってしまうものだからこそ、私たちはときにそうした存在によって心を休め、息継ぎをし、笑みを取り戻していくことができるのかも知れません。
生活に詩や自然が必要な理由というのは、まさにそういうことなんだろうと思いますし、今週のしし座としては、まず世界にはいろんなレイヤーがあって、そこを行き来しながら自分は生きているんだということを改めて意識して過ごしていく、というくらいがちょうどいいのではないでしょうか。
しし座の今週のキーワード
純粋な役立たずほどいとおしい