しし座
魔法の文法
隠れ蓑のしたの真実
今週のしし座は、「雪女郎鶯張りに音もなく」(山田佳乃)という句のごとし。あるいは、想像のなかで初めて垣間見える真実と相対していくような星回り。
大雪の降り積もった屋敷か寺院か。忍びの者でさえ踏めば鳴るという鶯張りの廊下を、音もなくやってくる者の気配だけがある。もちろん実際に見えるのは灯りが照らすわずかな空間の先に広がる闇の奥行きだけですが、それだけに、かえってその気配が濃密に伝わってくるのです。
掲句は雪女郎(雪女)という存在が、雪に閉ざされ過度に張り詰めた人の心が作り出したものかを実感させてくれる一句と言えますが、しかし、何かをまざまざと想像できるということは、裏を返せばその何かが確かに存在するということを示した一句とも言えるのではないでしょうか。
恐ろしくも美しい雪女に入れ込んで、みずから命を落としていった伝承のなかの男たちの状態を「狂気」と呼ぶ人たちがいる一方で、同じ状態を指して「愛」と呼ぶ者だっているように、誰かの心に刻まれた「感動」が、個人の寿命をこえ、時代さえも越えて「真実」として伝わっていくことだってあるはず。
そうして伝承や文学や歌というのは、しばしば当時は認められにくかった真実の“隠れ蓑”となりつつも、心当たりのある人にはその中身を積極的に開示するのです。同様に、18日にしし座から数えて「隠された真実」を意味する12番目のかに座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、そうした隠れ蓑のしたの“素顔”を喝破していきたいところ。
明るい直感
真実であれ人間であれ、“素顔”というのはいつだって「垣間見える」ものですが、普段の日常において、ふとした拍子で行われる「わき見」や「よそ見」などもまた、私たちが「想像」をかき立てていく上できわめて重要な契機となっているように思います。
例えば、ホームに入ってきた電車の窓ガラスに反射した強い光や、不意に目に飛び込んできたはじけるような誰かの笑顔。あるいは、ブルーライトに照らし出された幽霊のような文字列の中でそこだけ不思議と光っているような文章であったり。
そういう見た瞬間に内側から希望なのか情熱なのか分からない、明るさとしか言いようのものが湧いてくる感覚を、なぜだか私たちは既に知っている。これもまた、掲句のようにかそけきものの消息を追っていった際にかかる魔法の一種と言えるのではないでしょうか。
今週のしし座もまた、そうした“魔法の文法”をどうにか掴んでいくことで、思わずわっと嬉しくなるような瞬間と立ち会っていくことができるかも知れません。
しし座の今週のキーワード
わき見せよ、よそ見せよ