しし座
柿のように熟していく
静かに、着実に
今週のしし座は、「しみじみと日を吸ふ柿の静かかな」(前田普羅)という句のごとし。あるいは、精神がシーンと静まり返っていくような星回り。
雨にも風にも動かされない、よく晴れ渡った日の下で、梢の先の柿が赤い色をして静かに丸い形を見せている。太陽は偏ることなく万物を照らしているが、その中でもこの梢の赤い柿は飽くことを知らないかのように、しみじみとその日の吸い取っているというのです。
当然この柿は、はじめは青かったものが日を経るにしたがって赤くなってきた訳ですが、静かな晴れの日に柿が落ち着いて日光を吸い取っているように感ぜられたのは、おそらくその柿に対した時の作者の心それ自身が落ち着いて深くそのおもむきに吸引されたからでしょう。
つまり、柿がしみじみと日を吸うというのは、とりも直さず作者がしみじみと柿をながめているということであり、掲句ではほとんど作者が柿になってしまっているほどに深く立ち入っているのだと言えます。
19日にしし座から数えて「ひとつの結末」を意味する10番目のおうし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、そんな作者のごとくいったん自分を空っぽにしてみるといいでしょう。
「たとえわれらが欲しなくとも、神は熟する」
1904年、スウェーデンの社会思想家であり女性解放論者であったエレン・ケイに「あなたは神を信じますか?」と問われた詩人のリルケは、次のように答えたと言います。
……このような苦しい体験のすべてから、わたしは次のように信じるようになりました。精神の発達時期に、神は存在しない、存在しえたことはまったくないと思い、また言う、そういう人々は正しいのだ、と。けれども、これの告白は、私にとっては無限の肯定なのです。というのは、もしかすると神は使い尽くされて、消えて無くなってしまったのかもしれないという不安が、すっかり解消して今は、神がやがて存在するだろうことを知っているからです。神はやがて存在するでしょう。孤独な、時間の外に身を避けている人々が、神を建てるのです、心と頭と手で神を建てるのです。ものを造る孤独な人々、芸術作品(すなわち未来の事物)を造る人々が神を建てる、神の実現に着手するのです
いま神は存在しないが、未来における神の存在を信じるというリルケの言葉は、先の「日を吸う梢の柿」とあいまって、まさに今のしし座にとって極めて重要な示唆を与えてくれるはず。
今週のあなたもまた、みずからが溶けあい一体化していくに値する態度や信仰を改めて見定めていきたいところです。
しし座の今週のキーワード
神を建てる