しし座
埋められた水路を取り戻す
匂いという水路
今週のしし座は、「河童(かわたろ)にあればこの香か水葱(なぎ)の花」(飯田龍太)という句のごとし。あるいは、コミュニケーションの解像度をグッとあげていくような星回り。
「水葱」は一年生の水草で、「ミズアオイ」の古名。夏から秋に紫色の花を咲かせるのですが、昔はその若葉を食用にもちいていたそうですが、今では絶滅危惧種扱いで、311以降にミズアオイと共生する田んぼづくりが実験的に取り組まれています。
掲句では、そうした花の匂いに作者はなんと河童の存在を感じ取っているのです。しかも、何かの比喩とかあてどない空想として、河童という言葉を使っているのではないことは伝わってくるのではないでしょうか。
ただ、もちろん、いわゆる客観的ないし科学的なリアリズムからははみ出しているのですが、そこには確かな必然性とゆるぎないリアリティがあるのだということも感じ取れるはず。
おそらく、地霊のちからをそのまま句に引き入れていくことで句を詠んでいたのでしょう。そして、そうしたリアリティは必ず聴覚や嗅覚、触覚など、視覚以外の感覚を媒介してやってくるものなのかも知れません。
17日にしし座から数えて「生きた交流」を意味する3番目のてんびん座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、いわゆる一般的な合理的現実をはみ出るくらいの勢いで相互浸透をはかっていきたいところです。
「浮力」の発見
コミュニケーションの解像度を上げるとは、地霊のちからを引き入れるとか、一体どういうことか。例えば、水の中に入れば誰もが「浮力」を容易に感じることが出来ますが、それを陸上にいながらにして感じることができたとしたら?
水の中に入って浮力を感じたのならごく当たり前のことですが、そうでないところで「浮力」を見出したのなら、それはまさに掲句の作者が為し得たような、詩人による発見に他ならないでしょう。
頑張れば頑張るほど水流に逆らって歩いた時のような重たさや不自由さが増していくこの世界において、一時的にしろ「浮力」の助けを借りられた時、人は新たな夢を膨らませる。
本当はあそこに行ってみたかった、あの人と会って、こんな話をしてみたかった……。どんなことでもいい、今週のしし座は、浮力を自身の体感に引きいれつつ、自分自身の魂の流れを解放していくことがテーマであり、その中で、自分の想像力がどれくらい「すこやか」なものであるかも同時に問われていくことでしょう。
しし座の今週のキーワード
開かれつつも驚いていく