しし座
仙人になるということ
風狂とアヴァンギャルド
今週のしし座は、「俳句の理想は俳句の滅亡である」という種田山頭火の言葉のごとし。あるいは、理想的な生き方におのれを近づけていくような星回り。
明治44年(1911)に雑誌に寄稿された『夜長ノート』からの一節。大正期に五七五や季語にとらわれない自由律俳句の旗手として脚光を浴びたこの作者が、他の自由律俳句に撃ち込んだ同時代の俳人と一線を画していたのは、こうした自身の文学理念をそのまま流浪の生活としても実践した点でした。
例えば「分け入つても分け入つても青い山」や「まつすぐな道でさみしい」、「石に腰を、墓であつたか」といった山頭火の句が多くの人を惹きつけたのは、おそらくその余りにまっすぐな表現の背景にある精神でしょう。
仏教に「捨身(しゃしん)」という言葉がありますが、実際に仏門に入った彼を支配していたのはそうした「捨て身」の精神であり、どこで野垂れ死にしようが頓着しないという風狂の美学であり、彼に妻子があったことを思うとその徹底ぶりは尋常でなかったことが少しは伺われるはず。
つまり、室町時代の怪僧・一休を思わせるそうした時代を超えた風狂性と、伝統に反旗を翻すモダンなアヴァンギャルド精神の稀有な融合こそが、山頭火の真骨頂だったのです。
10日にしし座から数えて「霊主体従」を意味する12番目のかに座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、自身がいのちを懸けてでも体現したい理想やビジョンを改めて思い出していくことがテーマとなっていくでしょう。
仙境に遊ぶ夢を見る
古代中国や中世日本の老いの図像には、しばしば老いたる者が最も若いというパラドキシカルな直観が垣間見られますが、それは気功やタントリズム、太極拳や養生訓などの実践を通していかにエロスを深化し純化させていくかというあくなき道の探究として今日においても僅かながら、その命脈はなんとか保たれています。
実際、脳科学的な見地としても、若返りは心身の調整コントロールによる脳の活性化と大いに相関関係にあるそうで、これは明らかに老いをあくまで「死ぬ向かう身体」と見なす西洋的な思考の枠組みとは異なる東洋的な枠組みに即した人間観であり、例えば子供らと遊ぶ良寛さんなどもそうした東洋的な老いの理想の具現者と言えるでしょう。
その意味で、今週のしし座もまた、「若さに向かって逆成長する身体」という遊興的なまなざしを通じて、自分の内なるエロスを変現さしめ、また一つ新しい自分を迎えていきたいところです。
しし座の今週のキーワード
老いを若さに反転させていく