しし座
海洋民の記憶
御柱=舟を出す
今週のしし座は、諏訪の御柱祭のごとし。すなわち、危険ギリギリのところをあえて攻めていくような星回り。
山中から切り出した巨木の柱をひいて、崖のような斜面を一気に下っていく勇壮な姿で知られる御柱祭ですが、あれは山の中で古代に海を木をくりぬいた舟=御柱で渡ってきた記憶を思い出しているんじゃないかという話があります。
長野は内陸県ですから、陸地的な発想の中に自分を囲い込んでしまいがちですが、古代に東京湾や天竜川から内陸へと入って定着した海洋民たちが、長野南部の人たちのルーツの一つなんですね。それで、つねに海に足場をゆられるという陸地とは反対のきわめて不安定な生活感覚を思い出そうと、あれほど危険なお祭りを続けているのかもしれません。
今週は、自分DNAの奥深くに残っている流動性を実感を取り戻していくためにも、ひとつ自分の日常に、口癖のようなものを取り入れてみるといいでしょう。
海を見つける
311の後に、やたらと「絆」という言葉が流行りました。それは自然発生的に生まれてくる分には美しいものですが、押しつけられた時にこれほど嫌な言葉もないでしょう。
それで、なぜこれほどまでに嫌に感じるのかと考えてみると、絆というものが陸地的な発想のものだからでしょう。
つまり、橋をつくって、孤立した人間同士を結んでしまいましょう、安全な陸地を拡大していきましょうと。そうやって明治以降の東京は、わずかに残っていた水路もつぎつぎに暗渠にして、街そのものを巨大なコンクリートのかたまりのようにしてしまいました。
そうして自由な海の喪失という現実さえも次第に見えなくなって、孤立していたとしても、ときどき行ったり来たりする舟があれば十分じゃないか、という海洋民的な発想さえ持てなくなってしまった結果としての、生きづらさではなかったか。
今週は、島と島、人と人との間に広がる海を、もう一度発見しなおしていくこと。それがテーマです。
今週のキーワード
水のない水辺から