しし座
みっともなくも美しく
行基はえらい、智光はすごい
今週のしし座は、『日本霊異記』の「智者の変化の聖者を誹り妬みて、現に閻羅の闕(みかど)に至り、地獄の苦を受けし縁」というエピソードのごとし。あるいは、こっちでやっているうちにあっちでもできているという話。
なんだか長くて難しいタイトルですが、これは行基という素晴らしいお坊さんのことを妬んでいた智光というお坊さんについての話。とても知恵のある人だったのですが、行基がみんなに尊ばれて大僧正にまでなるので嫉妬を抑えきれなくなって、つい自分のほうが優れているのにとか、あることないこと悪口を言っていたら病気になって死んでしまった。
それで閻魔の宮殿に行って地獄で拷問されて苦しみを受けるのですが、その際、西の方に立派な楼閣が見えるので、これは誰がお住みになられているのですか?と聞くと、「お前は知らんのか、行基菩薩が亡くなられたら住まわれるのだ」と聞く訳です。結局、智光は死後九日目に生き返って、行基に謝り助かるのですが、この世に何かしているあいだに、あの世でも何かができているという話は、仏教の広まる前から割と出てきます。
心理学者のジェイムズ・ヒルマンが「ソウル・メイキング(魂つくり)」ということを言っていたのも恐らくこのことで、自分で家をつくったり、家族をつくったり、この世で目に見えるものをつくっているあいだに、魂の方も目に見えないなにかをつくっていて、それらは表裏一体なのです。
これはひっくり返せば、この世であこぎなやり方で儲けていると、向こうではだんだんボロ屋ができているということでもあります。
2月18日にしし座から数えて「為すべきこと」を意味する10番目のおうし座に位置する天王星(転覆)が土星(現実)と90度の角度をとって思いきり否定していく今週のあなたもまた、「何を為すべきではないか」という視点から今後の方向性について(主に仕事)、改めて考えてみるといいでしょう。
真剣の美
先のお話は、一方でどこか「妬心(としん)の尊さ」ということを思わせます。例えば、「毛鞠の子妬心つよきはうつくしき」(石原舟月)を引くと、これは数人の子たちが集まって毬つきをしている中で、ひとり相当負けず嫌いな子がいたのでしょう。どうしても一番になりたいと、何度も毬をつきなおしたり、遊びの継続を促していたのかも知れません。
そして作者はそんな「妬心」の強い子の中に、ほかの争おうともしない子供たちにはない、「真剣の美」を見出したのだと思います。
今は泥臭く何かに一生懸命努力することよりも、要領よくできるだけラクをして成果をあげることを尊んで、前者を下に見る風潮がありますが、今のしし座からは、そんな風潮を斜めに斬り捨てていくような潔さを感じます。
どうか周りの雰囲気やマイナスの同調圧力に屈さずに、自分の中の芯の通った気持ちを貫いていってください。
今週のキーワード
本気になれる奴が一番すごい