しし座
魂への気づかいを
※当初の内容に誤りがありましたので、修正を行いました。ご迷惑をおかけし大変申し訳ございません。(2021年1月25日追記)
新たな種子を撒く
今週のしし座は、「チェルノブイリの無口の人と卵食ふ」(攝津幸彦)という句のごとし。あるいは、難しい挑戦を自身に課していくような星回り。
1995年に詠まれた句で、チェルノブイリで史上最悪の原子炉爆発事故が起きたのはその約10年前の1986年でした。
これは明らかに1947年に広島を訪れた西東三鬼の「広島や卵食ふ時口ひらく」という句を踏まえたものですが、チェルノブイリの事故も広島の惨劇の繰り返しであり、またその後2011年に東日本大震災時に福島で第一原子力発電所事故が起きたことを知っている私たちにとって、この句は恒久的な響きをもつ人類への警鐘のようにさえ思えてきます。
しかし、それでも人は「卵食ふ」のであり、いかなる苦しみや悲しみのさなかにあったとしても、私たちは自然な本能的な行為としての生を選択し続けていくのです。
そして、生を求めてたくさんの人びとの口が開かれるところを想像してみるだに、この句は警鐘句であると同時に、力強い人間賛歌でもあったのだということがより強く感じられてくるのではないでしょうか。
29日に自分自身の星座であるしし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、警鐘を鳴らすことと誰かを勇気づけることをいかにして両立させていけるかが一つのテーマとして問われてくるように思います。
柔らかい機械の振動
最近ますますあらゆることがわかりやすく、明確に語られ、誰も彼もがポジション・トークに徹しているようなディストピアへ、ますます社会全体が一丸となって突き進んでいるように感じられますが、そういう流れに反するための芸術や歌や教育であるとして、もしそこで魂ということを前提に置くのなら、まず第一に「ここではない異界」を作りだすことを考えなければいけないだろうと、そんな風に思います。
例えば、夜中に道で不意に出くわすノラ猫は、それは見事に異界を作りだします。社会の大人達からすれば、何でもないような意味の空白地帯である公園の一角に、猫がたたずむ。すると、風はもう静まって、ノラ猫は柔らかい機械の振動へと変わり、いよいよ空気を震わせて、一瞬の内に月光を冴え冴えとしたブルーに様変わりさせてしまう。
そんな光景を垣間見たときの、「とんでもないものを見てしまった」という驚きこそが、魂をことほぐ最高の贈り物であり、そのための余地や余白を作りだしていくことこそが、魂に対する敬意の払い方なのではないでしょうか。
今週のしし座もまた、そんな魂への気づかいを踏まえた上で、では自分ならどんなふうに異界を作り出していけるのか、と考えてみるべし。
今週のキーワード
月の光がそっと差し込んでくるだけの余地や余白