しし座
笑いと囁き
※2021年1月4日~1月10日の占いは休載とさせていただきます。(2021年1月3日 追記)
底が抜ける
今週のしし座は、「初笑ひして反り返る僧仏師」(山口燕青)という句のごとし。あるいは、怖いくらいに俗世を超越してしまうような星回り。
作者は昭和の時代に仏像を彫って生活していた仏師であり、詠む句も仏師専門の俳句です。
「初笑い」は新年になって、初めて笑うことで、「笑う門には福きたる」ということば通り、1年が笑いに満ちた幸多い年であるようにという祈りが込められている訳ですが、どうしても死のイメージがついてまわる僧や仏師との組み合わせには、どこか豪快な感じがあって、単なる滑稽味のみに堕していません。
思わず反り返るほどの大笑いが、すぐ死の傍らに転がっている。数多の出会いや別れ、酸いも甘いもかみ分けた末の、こうした凄味というのは普通の人間からはまず生まれこないはずで、あの反骨の禅僧のような、鍛え抜かれた人間の風格があります。
どこか中世の10人の男女による恋愛話や失敗談など、艶笑にみちた退屈しのぎ話集である『デカメロン』にも通じる世界観でもありますが、デカメロンの舞台も大流行しているペストから逃れるため郊外に引きこもったという設定でした。
30日にしし座から「生を取り囲むカオス」を意味する12番目のかに座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分の人間としての底がスーッと抜けていくのが実感していけるはず。
夜風のささやきと共に
かつて「馬は死後何になるか?光の馬になるに決まってる」と言った人がいましたが、これが自分のこととなると、さっぱり分からなくなります。それに、確かに死ねば文句はなくなりますが、死ねないことが問題というか。われわれは醒めても醒めてもなお醒めなければならず、そういう永劫の悪夢の中にポイと放置されているかのようにも思えます。
それでも日が暮れて、風が吹き、空に星が瞬いているのを見かける頃には、束の間のあいだ精神は記憶の上澄みのように透きとおって、これまで見えていなかったものが見えるようになります。そういう時の、どこかニュートラルで、ごまかしのない眼差し(=“それ”)が、この年末年始のしし座においては凄味を増して力強く現れてくるでしょう。
いつもなら目の前を素通りさせている現実や、気にも止めていなかった関係性の中に、何か引っかかるものがないか。あるいは、ここのところ忘れていたような長年の疑問をほどくヒントがあたりに転がっていないか。
するどく、はげしく、心のままに、問うてみてください。
今週のキーワード
他界からのまなざし