しし座
説明不可能な持続
宗教的狂熱
今週のしし座は、街でたまたま坊主の説法を聞いて、やにわに頭を丸める盗賊の頭のごとし。あるいは、意志と情熱を急角度で取り戻していくような星回り。
鎌倉時代に編まれた世俗説話集か何かにそういう話があったのですが、盗賊はそれからまっすぐ西へ行ったのだそうです。それで海に突き当たって、浄土をのぞんで、最後は海にはまって死んだのだとか。
本当に極楽浄土なんてものがあるのかなんて分からないし、もし仮にあったとしてもそこに生まれ変われるかどうかも定かではない。けれど、行かずにはいられなかった。たとえそれで死んでしまったとしても、やらずにおめおめと生き永らえるよりずっとマシだという確信。そうであって初めて、それは「情熱」と言えるのではないでしょうか。
この場合は、宗教的狂熱とも言えるものが、これまでそういうものと無縁だったひとりの男に突然湧きおこった訳ですが、こういうことは歴史的にはそう珍しいことではありませんでしたし、むろん現代でも起こりえることだと思います。
特に、19日に自分自身の星座であるしし座で新月を迎えていく今週のあなたならば、いつそういうことが起こってもおかしくないのではないでしょうか。
永遠不滅の湧き水が泉のように噴き出して、背中の奥から首へ、首から後頭部へと勢いよく通り抜けていくような、そんな感覚を少なからず体感できるかも知れません。
自分自身と溶け合う
死後になって刊行された『内面の日記』によって世界的に名を知られるようになったアミエルという人がいました。彼は少年の頃に孤児になり、生涯にわたり独身でしたが、ひたすら孤独な自己の慰めに、自身の苦悩、苦しみ、悲しみ、寂しさを、30数年にわたってノートに書き続けましたが、ある日の日記には次のように述べていました。
この毎日の独白は、祈りの一形式、精神とその原理の談話、神との対話である。これによってわれわれは、面目をすべて取り戻し、混沌から明晰へ、動揺から平静へ、散漫から自己統一へ、偶有性から恒久性へ、特殊性から調和へと立ち返るのである
おそらく、これは長らく日記を書き続けた末にいたった境地なのでしょう。とはいえ、彼がそれほどまでに日記を続けられた原動力も、ある種の宗教的狂熱と言っていいのではないでしょうか。
今週のしし座もまた、アミエルほどではなくても、沈黙とともに自分自身と溶け合っていく、意識的な睡眠のような静かな時間を過ごしていくことを心掛けていくといいでしょう。
今週のキーワード
日記は、孤独な人の打ち明け相手、慰安者、医者である