しし座
何をせんとや生まれけむ
不和の調停
今週のしし座は、「御奉射(おびしゃ)」という神事のごとし。あるいは、思ってもみなかった角度から自分がこれまでやってきたことをとらえ直していくような星回り。
伊勢湾の神島、海岸沿いや離島などでは、徒歩で弓を射て、それが的を射たかどうかで占いをするというお祭りが神社でよく行われています。
これは太陽がたくさんあって暑すぎるので、その太陽を射殺すという太平洋全域に伝わっている非常に古い神話がもとになっていて、大抵は地上と天がくっついていたという話とセットとなっています。
もともと火を持っていなかった人間がそうして天空の火を盗んだ結果、天地は離れて生き物が地上に暮らせるようになった。ただ、盗まれた方は「返せ」と言って怒り、その結果、戦争が始まる。この戦争=天地の不和をいかに調停にもっていくかが、全神話の主題なのだというのがレヴィ=ストロースという文化人類学者の考えでもあります。
そして、柱を立てたり、石を置いたり、花を活けたり、俳句を詠むといった芸術活動というのは、もともとそうした天地の不和を調停して秩序を取り戻すという神話の延長線上にある行為なのだという考え方もできる訳です。
12日にしし座から数えて「視野の広がり」を意味する9番目のおひつじ座で火星に月が重なっていく今週のあなたもまた、さながら的を射抜いた時のような「我が意を得たり」という実感が呼び覚まされていきやすいでしょう。
再統一をめざして
2世紀ローマの哲人皇帝マルクス・アウレリウスは、自ら書き残した『自省録』において、まずこの宇宙について、一なる魂をもつ一つの生き物として考えよと述べます。さらに、万物がどのようにして一なる感性に帰っていき、またどのようにして一なる欲求からあらゆることをなすに至ったのかを考えよ、と。
つまり、彼にとって宇宙とは、赤ちゃんにとっての母乳のように、自己をそこから切り離してはならない、すべての根源でありました。そして、そうした宇宙観に立った上で、次のように言うのです。
「おまえは、あの宇宙の本質的な統一から、どこかに自分を投げ出してしまったのだ」
いつだって私たちは、何かを失ってからしかその大切さに気付くことができない。ただし、人間には再び自らの統一を取り戻していく可能性も与えられている。二度と失いたくないと心から思えるものは何か、今週はきちんと心に問いかけさせすれば、それがはっきりと浮かび上がってくるでしょう。
今週のキーワード
二つの異なるものの調和